2000年1月1日
お前の主義なんて今はきいてない。とにかくお互い仕事に、と言いかけたベルボーイを遮るように、彼は着ぐるみの両手を自慢気に広げた。
「ふふっ、どーだ。俺達つきあい出して初めて正月に一緒にいるんだぜ」
耐火ドアの向こうから、テラスをまわって再びロビーに戻って来たらしいパレードの音楽が聞こえる。
ミッキーのいないパレード。
ベルボーイは、『ほめてくれ』と書いてある彼の顔を、彼を初めて見るような目で見た。
ついで、わきわきと動いている着ぐるみの指を見る。
ものの5分間だったけど、二人には生まれて初めての5分間だった。
ミッキーは不埒なことにベルボーイをそっと抱き寄せると、顔を上げさせ、恋人に今年初めて素肌で触れた。