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傀儡草紙

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11.親心 ―人形、ロボット、AI―



-- こんにちは。本日はよろしくお願いいたします。

神 ああ、どうも。こちらこそよろしく。

-- さて、早速ですが、最近はどうでしょうか。調子とか、活動とか。

神 うん。わりと最近は余裕があるかな。ちょっと悠々自適感が出てきちゃって、少しばかり暇かも。

-- いやいや、まだまだ現役でいてもらわないと、こちらとしては困ってしまいますよ。

神 ほんとぉ? 実はそうでもないんじゃない? そろそろ邪魔になってきたんじゃないの、ヒトさん的には。

-- いや、そんなことはないと思います。まだまだ神さまにはいてもらわないと困ることが多いですし、なかなか僕らだけでは世界は回せないですよ。

神 そうかなあ。あやしいなあ。あ、これがリップサービスってやつ?

-- 例えば、どういうところがあやしく見えますか?

神 やっぱさ、みんなヒトのようなものの創造に憧れてる節があるよね。ファンタジーなんかでも人体を新たに創り出そうって話、多いじゃん。実際のヒトも、最初は土偶とかはにわとか人形とかから始まって、次第にからくりとか機械になっていって。気付いたらいつの間にか球体関節とか使いだして、リアルなやつも出てきて、最近はヒトと見た目がそっくりなロボットとか、頭のいいAIとかさ、そういうところまで行き着いちゃってるじゃん。もう神のことなんて差し置いて、俺たちで新たな生命を創っちゃおうぜって気概をひしひしと感じちゃうよね。

-- 確かに、一部の先進的で実際的な方々はそういった研究を行ってますね。でも、まだまだ信仰心の強い人もいらっしゃいますし、そういった方々は欠かさずあなたに祈りをささげていると思いますよ。

神 まあ、そういうヒトもまだいるとは思うけど。でも、やっぱりヒトは最終的には科学のほうに重きをおいていくんじゃないかな。

-- でも、そういった科学偏重主義が幅を利かせていく中で、最後のよりどころとなるのがあなたの存在だと思うんです。そのへんについてはどうお考えですか。

神 いや、君らヒトならどうにかうまくやるでしょ。数千年ぐらい君らはこの星で営みを続けてきて、いろいろと困難はあったけどなんとかしてきたんだから。

-- ありがとうございます。

神 なぜかさ、その点はあんまり悲観してないんだよね。多分どうにかなるだろうなっていう信頼が根底にあるというか。

-- それはやはり、ご自身で創られたからですか。

神 うーん。それもあるかもしれないけど、ふかんで見てて、どうにかするなって雰囲気を感じるよね。こいつら、なんだかんだ言っても最終的には理性的になるよなって。もちろん、本当にダメそうなら直接、介入するかもしれないし、大昔には結構そんなこともあったよ。でも、最近は少し安心して見られるようになったよね。

-- なるほど。

神 やっぱりさ、神もヒトも自分が創ったものって愛おしいと思うんだよ。愛する人と自分との子ってやっぱ最高じゃん。最近は君たちもいろいろあって、子どもの出生率が減少してるみたいだけどさ。どうあれ、自分が創ったものってのはやっぱりかわいいんだよ。でもその反面、自分を創ってくれたものってのは、どうしてもいつか鬱陶しくなるんだわ。だから、ヒトも創ってくれたやつのことを鬱陶しく思い始めて当然だと思うんだよね。

-- そうですか。

神 だからこそ、今はなるべく黙って見ていようって感じなんだ。子どもが育ったから、とりあえず自由にやってみなよって時期。でも君たちをちゃんと創ったっていう自負はあるし、決して見放しもしないし、最終的にやばかったらどうにかするから、そういう意味では最後のよりどころって言葉は合ってるのかもしんないね。

-- ありがたいお言葉です。

神 でもこれってさ、君らにも同じことが言えるんだよ。よくSF的な文脈で、ロボットが反乱を起こすとか、AIが暴走して人類が滅亡するとか、そんな話があったりするけど、結局それってかわいいと思えない━━愛情の欠如が原因だと思うんだよ。科学を信奉しているヒトは笑うかもしれないけどさ、そういう観念的な部分も持ち合わせる必要があるんじゃないかなって、ちょっと思ったりもするよね。

-- 深いですね。

神 シンギュラリティだっけ、なんかそういうのが起こると危ないかもなんて話もあるけどさ。神に言わせれば、君らヒトはもうシンギュラリティを3回ぐらい起こしてんの。創ったほうがもう隠居を考えるくらいのをさ。それでも、まあ、どうにかなってんだから、精魂を込めて人形だのロボットだのAIだのを創り、愛しなさいな。そうしたら、君らヒトの中に次の神が現れるかもしれないから。

-- われわれの中に神、ですか。

神 可能性はあるんじゃないかな。もっとも、ここまでの話でわかるだろうけど、神ってそれほど全知全能じゃないけどね。

-- ありがとうございます。あっという間でしたが、お時間が迫っておりますので、最後に一言、いただけたらと思います。

神 うん。いつか神のような存在がヒトから現れたら、一緒に苦労を語り合いたいな。きっとパンをつまみにワインが進むだろうね。

-- これからも私たちを見守っていてください。どうもありがとうございました。


作品名:傀儡草紙 作家名:六色塔