石のきおく
ぼくは用具室からスコップを借りると、山に向かって必死で走った。そして、さっきの地層の場所にいくと穴を掘った。
石ころだらけなので、なかなか深くほれない。やっと掘ったときには、もう日が暮れていた。
「ふう。これでおさまってくれよ」
ぼくは祈るような気持ちで石を穴に投げ入れると、大急ぎで埋めもどした。
疲れた足を引きずりながら帰ると、校門から、見なれた姿のふたりが走り寄ってきた。元通りになった先生とタケルだ。
「まこと。よくやったな」
先生がぼくの頭をくしゃくしゃっとなでた。
「もう、ポテトチップは一生いらないや」
と、タケルは大きなげっぷをしながら気恥ずかしそうに笑っている。
ふたりの笑顔に安心したぼくは、急に気が抜けてへなへなとその場にすわりこんだ。
先生におんぶしてもらって家に帰る途中、背中ごしに見た夕暮れの町が、なんだかなつかしく思えた。
こうしてへんてこな事件はおわったけど、実は、ぼくにはちょっと心残りがある。
それは……。もし、ぼくが石をさわっていたら、どんな恐竜に変身したのかなって。