変貌
その6
時は過ぎ、二十数年過ぎたころ高速道路となった家屋敷の代替えとして、夫が探した広い敷地の一つを購入し大改装と造園をした。
長女は大学卒業後就職していたが、追って次女も東京の大学に入学した。次女は熱心に勉学に励んだ成果が実り良い成績で卒業して大学院の修士を終了した。
次女が結婚して暫く経った頃母は病院で静かに息を引き取った。孫の顔を見ることもなく亡くなったのはまことに残念だった。
母が亡くなるのと相前後して夫が脳梗塞で倒れ、今までの温厚だった人が一変して野獣のような狂暴な一面を見せることが多くなった。
戦々恐々とはこのことをいう。
次女に孫が産まれてからはときどき帰省したが、脳病の療養中の夫はぼんやりしているので普通のおじいちゃんのように可愛がる風でもなく、かといって次女の家族が来ている数日間は大人しい人になっていたので娘たちはその状況を知らずに終わった。