菜の花フィーバー(続・おしゃべりさんのひとり言193)
菜の花フィーバー
僕は一面の菜の花畑を見ると、なんだか元気になります。
春ですね。
桜の花は散ってしまいましたけど、今年も菜の花とのコラボを堪能しました。
春先にはモミジの樹液を集めて、メープルシロップを作るつもりでしたけど、ちょうど両親の一周忌や外出の予定が多くて、うっかり木々が水を吸い上げるいい時期を逃してしまった。残念。
また僕は毎年この時期になると、タケノコが気になります。
去年のひとり言で、近所の里山で久しぶりに孟宗竹のタケノコを収穫したって話をしましたけど、それも今年はやってない。
代わりに5月中旬には河原に真竹のタケノコが生えるんで、それを採りに行って、今年はメンマを作る予定です。
山菜採りは僕の楽しみの一つでもあります。
3月中旬にフキノトウを採って天ぷらにしたけど、大量に採りすぎたので、残りをフキ味噌にしてみたんです。
今まで作ったことありませんでしたけど、ネットで調べました。
採取したフキノトウをしっかり洗って、細かくみじん切りにします。
赤味噌、麦味噌、田舎味噌、家にある味噌を全部ミックスして、その中に刻んだフキノトウをねりねり。
砂糖とみりんとお酒を加えて、フライパンで水気が飛ぶまで炒めたら出来上がり。
甘辛く苦みが効いたそれは、お弁当のおにぎりの具材として活躍中です。
4月になってからは山ウドを掘りました。
うちの田舎の畑の山際に、勝手に生えてくるんです。
夏には所謂「ウドの大木」になっちゃいますけど、それにも利用価値はあるんですよ。
長く伸びた枝の先にはずっと新芽が出続けます。
その穂先は天ぷらにすると、なんともいい香りで美味しいんですよね。
でも春先に地中の茎を掘り出して、薄くスライスしたものにカラシ酢味噌を付けて食べると、そのさわやかな香りに勝るものはありません。
カラシ酢味噌で和えて食べるなら、この時期もう一つお勧めの山菜が、ヤブカンゾウです。
夏にはオレンジのきれいな花を咲かす小さなユリのような植物ですけど、その新芽が4月頃河原に出ます。左右交互に何対かの葉が出て、15センチくらいに伸びたら、根元からカットして来て、軽く茹でてヌタ和えにします。
柔らかいネギみたいなのに、歯ごたえはきゅっきゅ~て感じで、これもたまらん。
でも山菜って、いろんな種類がそこかしこに生えてるんですけど、ある程度知識が無かったら、採取に躊躇しますよね。
そんな人でも簡単に識別できるのは、菜の花じゃないでしょうか? 河原にいっぱい群生して咲いてるでしょ?
某讃岐うどんチェーンに行くと、サイドメニューに天ぷらを選べますよね。
その中に期間限定で、菜の花の天ぷらがあったんですね。
それをうどんと一緒に食べたらこれが絶品で、(菜の花の天ぷらって、こんなに美味しいものだったのか?)って感動すら覚えました。
菜の花は毎年、桜と同時期に咲きますよね。こんな環境でお花見って、テンション爆上がります。新緑の中、薄ピンクと黄色の花に、フィーバーフィーバー!
河川の土手で桜と菜の花を、一緒の写真に収めるってこと、毎年やってんなぁ。
なぜか開花のタイミングが同じなんですよね。
ということは、桜の開花時期より1週間くらい早く菜の花のツボミを摘み取れば、天然の菜の花が食べられるじゃないですか?
そう思い立って僕は、時期を逃さず探しに行きました。
事前に下調べしてたんですけど、河原に生えてる菜の花って、アブラナだけじゃないんですよ。
アブラナ科の植物はとても有用で、栽培野菜に品種改良されてるのが多いでしょ。
キャベツや白菜、大根も元はアブラナですよね。
野生種にもいろいろあって、通常「菜の花」と言えるのはアブラナの原種のことだと思うんですが、品種改良されたのも結構野生化してしまって、中間の雑種みたいなものも多く存在してるんだそうです。
その中でも野生種の代表格が、ハマダイコンとカラシナです。
アブラナ自体もたくさん生えてますけど、茎が細く葉も小さいので、可食部分の歩留まりが悪いし、それにはあまり興味ありません。
ハマダイコンはその名の通り大根の野生種です。根っこも大根そのものですし、栽培品種の大根と同じように食べられます。
ただやや小さく固めなので、お試し以外で敢えて採取して来てまで食べる必要はないかも。
でも葉っぱは別です。
僕は大根葉が大好きなんですが、スーパーで売ってる大根って、葉っぱが切り落とされてるじゃない。
もったいないよね。そこが美味しいのに。
ざっくり刻んで塩もみしてもいいけど、僕は細かく刻んで、ごま油でちりめんじゃこと一緒に塩コショウで炒めて、ご飯にかけて食べるのが好きです。
オリーブオイルでベーコン炒めにしても美味しいですよ。
コリコリシャキシャキの食感がいいんですよ。
売ってないんなら採りに行くしかないでしょ。河原にあるんだから。
葉っぱの形で大根だって判り易いし、花はうす紫だから咲けば品種を特定できます。
アブラナに比べると茎が太いので、桜の開花に先駆けて伸びたくらいのツボミが、ちょうどいいです。
この菜の花を天ぷらにすると、ほろ苦く食べ応え抜群です。
そしてカラシナの方はどうかって言うと、ハマダイコンより葉っぱが大きくて、それは漬物にするのがいいでしょう。
もちろん菜の花部分は天ぷらにもいいですが、お浸しにすると、他の菜の花とは違う味わいがあります。
カラシナって言うくらいだから、カラシの味がするんです。
あの黄色いマスタードのことですよ。
そもそもカラシ自体、このカラシナの種が原材料ですから、いくつか品種はあれど、河原に生えてるやつも、葉っぱでも花からもマスタードの味がします。
火を通すとその辛みは消える印象ですが、風味は残っています。
僕はその葉っぱを塩漬けにした『カラシナ漬け』が大好物です。
どんな味かって言うと、高菜漬けや野沢菜漬けみたいな感じです。
そう、カラシナは塩漬けしておくだけで、勝手に乳酸菌発酵するので、スーパーで売ってるそういった郷土のお漬物と同じような味になってくれるから簡単。
僕は長野でよく野沢菜を買ってきますし、とんこつラーメンには高菜のみじん切りを入れます。
でもそれをわざわざ買わなくっても、近所の河原にいくらでも天然材料が生えてるって話です。
そんなカラシナの葉っぱをちぎってきて、塩もみしてZiplocの袋に入れて、一週間もすれば、美味しい漬物に変わってる。
手間なんて何もない。買い物に行くくらいの気軽さで大量ゲットできてしまうくらい、河原にはいっぱい生えてます。
ちなみに行政に確認すると、「河川ってのは、水産資源(魚や貝、甲殻類等)の採捕に規制はあるけど、河原の地面や生えてる植物のほとんどに所有権はないから、景観を変えるほどじゃなければ、誰でも植物は採集可能ですよ」ってことらしいです。
つづく
作品名:菜の花フィーバー(続・おしゃべりさんのひとり言193) 作家名:亨利(ヘンリー)