そこに山があるからって(続・おしゃべりさんのひとり言190)
でも調べてみると、かなり上の方まで車で行けたり、ロープウェイがつながっていたり。
(こういう山なら行けるんじゃない?)
いろいろ調べて、比較的簡単そうな高山を選ぶようにしました。
僕ら夫婦は、以前から長野県の安曇野周辺が好きで、年に1~2回は遊びに行っていますから、そのエリアを囲む日本アルプスが身近に思えたんです。
でもさすがに3000メートル級の山々は、気温や植生が地べた(麓の自然)と全然違います。
もともと自然科学好きの僕ですから、そんな環境にハマってしまいました。
高山植物に魅了され、オコジョや雷鳥を探してみたり、その山がどうやってできたとか、その岩石の組成とか、そんなことにも興味が湧いて、僕はよそ見だらけの登山者になっているかもしれません。
勿論、そこの景色も好きです。
樹木が一本も生えないほどの標高では、まるで別の惑星のような風景にも思えます。
また下界を見下ろすと、さすがに3000メートルからだと、飛行機から見てるくらいの高度に感じます。
遥か彼方までの360度の大パノラマを、ゆっくりと心行くまで満喫することができるんです。
僕は頂上に着くと、必ずコーヒーを飲みます。
バーナーや調理器具を持って行く方も多いですが、僕は麓の駐車場で沸かしたお湯を、ポットに入れて登ります。カップ麺もそれで充分作れますし。
これは“サーモス”とかの流行りの保温ポットじゃダメですね。
個人的には“象印”をお勧めします。3時間たっても熱々ですから。
登山中の行動食(もぐもぐタイム)には、ドーナツと一口羊羹、あられ等を持参します。
特に甘いものは、一口食べるとすぐに体力の回復を実感できます。
それに飽きたら、あられで口直しです。
でもあられは消化が悪く、よく噛んで食べないと、歩いてる時にお腹が張って痛くなってきます。カリカリより、サクサクのあられがお勧めです。
水分は普通の水がベストです。2~3リットルも飲むから、スポドリやジュースはすぐ飽きてしまいます。
こんなふうにしながら、年2~3度、有名な山にチャレンジを続けているんです。
それ以外は。近場の低山で、トレーニングもしています。
とは言っても、いつも最初の登り始めは、体が慣れるまで無茶苦茶辛いもんです。
20段も階段を上がれば、足は疲れてくるもんでしょ。
僕は息も上がって、すぐに立ち止って休憩してしまいます。
(それを無限に続けるのか)って考えると、やっぱり山登りなんかしたくないですよね。
でも不思議なもんで、15分くらいそれが続くと、急にしんどくなくなってきて、休まなくても登り続けられるようになってくるんです。
不思議ですよね。マラソン選手みたいにアドレナリン(脳内麻薬)が分泌されると、ランナーズハイになるんでしょう。
その後しばらくすると、疲労感が気持ちよく感じるゾーンに入ります。
ドーパミン(快楽物質)が分泌され始めたんでしょうね。
こうなれば、山登りが楽しく感じられるってことを知りました。
僕が山に登る理由は、「そこに山があるから」じゃなくって、「自身の限界を延ばせるから」なんです。
スポーツ選手が試合前にウォーミングアップするのは、事前にアドレナリンを出しておいて、すぐに100%能力発揮するためでしょ。
それを習慣化できていないと、「一生、自分の能力のほとんどを出せないまま」ってことですかね?
今年になってからは、16キロのトレイルコースを上り下りしながら、朝から7時間かけて4万歩ほど歩きました。
それはフルマラソンを走り切った時とちょうど同じくらいの疲労感ですね。
こんな僕に妻も付いて来るんですから、彼女も結構やりますよね。
この夏に、夫婦で屋久島の縄文杉を観に、往復10時間のトレイルを予定しています。
でも僕もいい歳ですから、いつまでそんなことができるのか分からないでしょ。
だから、今のうちに無理してでも登りたいとこが多くあって、悩んでしまいます。
誰からも「お前、絶対無理して死ぬぞ」って言われますけど。
確かに経験不足だから、真冬の山は諦めています。
でも夏山なら、どんな岩山でも平気な気がするんです。
なぜなら僕、高いとこ、全然怖くないんです。
勿論若くない分、体幹は弱ってますよね。
踏み外してふらついたり、咄嗟に安全な足場に飛び降りたりってことが、うまくできないかもしれません。
それでも電信柱の天辺で、片足で案山子立ちできるくらいの自信があります。(命綱必須だよ)
今年、北アルプスは穂高連峰にある、ジャンダルム到達を目指しています。
そこはかなりの上級者コースで、毎年滑落事故が発生しているところですけど、そこのピークには、天使の姿をした看板が立てられてるんです。その天使に触りたい。(このひとり言の扉絵の写真参照)
妻は無理でしょうから、途中まで同行して折り返させて、山小屋で待機しといてもらいます。
携帯電波が届かない標高で、僕は無事帰って来れるのか、心配してるかな?
意外に、何も心配していないかもしれません。心配なら「やめて」って言うだろうし。
でもいくつか便利なアプリがあるんです。
登山者は皆、利用してると思いますけど、日本中の登山道が網羅されていて、事前に行動予定を作成すれば、そのまま自治体に入山申請もできて、当日の朝、保険もかけられます。
数々の登山者がその行程を記録されてるのも閲覧できるし、登山地図をダウンロードしておけば、携帯電波のない所でも、GPSで自分の位置が分かるし道に迷うこともない。
また同じ山に登っている方々にも、位置情報が交換出来て安心ですし、妻も山小屋で僕の位置を把握することくらいはできるって訳です。
しかもその歩いた道のりは地図上に記録されていって、履歴を残すことができます。
おまけにその登頂達成のメダル(スタンプみたいなもの)が集められて、収集癖の強い僕には、たまらんのですよ。
山登りにハマる意味は、ハマってない人には絶対理解できないと思います。
だから本格的な山には、一人で登る人がほとんどです。
だから僕みたいな寂しがり屋は、登頂した達成感もあって、山の上でも知らない人と会話をすることが多いです。
そんな知らない人同士でも仲間意識が芽生えます。
ぼっちなのは、人それぞれのペースを維持しないと危険というのも理由の一つですが、皆さん、自己責任だからこそ一人。
でも本当は(一緒に登ってくれる人いないかなぁ)って、誰もが思ってるんじゃないかな?
つづく