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打吹山の天女は梨ソフトクリームの夢を見るか?

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「百代さんはすごく魅力的です! 万葉集も半分以上恋の歌だから、百代さんにも恋してほしい! 百代さんのこと忘れない、今日はありがとう!」
 身を翻し、また駆け出す。
「あ! ちょっと……!」
 困ったな……ここまで関わってこれとか、気になり過ぎる。結末を知る権利が無いとか困り過ぎる!
 角を曲がると、浅津が一軒のベーカリーに入るのが見えた。百代も近づき、中を覗く。
 急に雨が落ちる音。ひさしがあり、百代は建物に身を寄せる。雨脚が速い。これは自然? それとも?
 店内から、唯一の男性客が出ようとする。Aくん似? イメチェン後??? ともかく、百代は黒い傘を体の陰に。
 男性は傘立てと雨を前にし、出入り口でまごつく。
 と、店内から、百代がこの日よく見た顔。その女性は男性の背中を少し見守り、声をかけた。
「どうかなさいましたか?」
 男性、苦笑いの口調。
「傘を盗まれたようで、帰れないんです」
 一緒に百代も苦笑い。目の前にいる美人が、その傘泥棒です……という百代も、スマートフォンをいじるフリの盗み聞き犯。
 女性がほほえむのが見えた。
「駐車場まででしたら、ご一緒しましょうか?」
「ええ、駐車場です。……じゃあお願いします、ありがとうございます」
 女性が珊瑚色の傘を取り出し、開く。近づいて、男性は尋ねた。
「あの……気のせいかもしれませんが、前にどこかでお会いしましたっけ」
 女性が男性を見つめる。
「その、何だろう……恋愛詐欺師みたいなことを言いたくないんですが、僕はあなたと目が合うと……何故だか、涙があふれそうになるんです」
 男性が声を震わせると、女性も目をうるませた。
「私たちは」
 そして、声を震わせた。
「私たちは、一千年前にも会いました……この美しい里、倉吉で」

        *

 アラームを止める。雨戸を開けて、光が射す。
 百代の部屋を、はこた人形が見守っている。
 さらに一人……見せた画面を覚えていて、彼女は倉吉の「ももた☆」を見つけた。
「適応してるな~」
 交わすメッセージ。なお、傘は記念の品としてそのまま贈り合うことで決めた。
【舎人が、やさしい人紹介するって】
「来ちゃったか」
 ――万葉の頃から、いやそのずっと前から、恋は大事なテーマだった。ずっとにぎやかであってほしい。私たちの日々。私たちのふるさと。
【イチオシ、ものすごい雰囲気イケメン】
「現代日本語解ってるのかなこれ」
【会う?】
 ……ひと呼吸の後、百代は答えを入力した。
【うん】

(了)