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積 緋露雪
積 緋露雪
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天国と地獄の婚姻

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天国と地獄の婚姻William Blake著
翻訳・積 緋露雪




目次
『天国と地獄の婚姻』
「悪魔」の声
記憶に残りし幻想
地獄の諺
記憶に残りし幻
記憶に残りし幻
記憶に残りし幻
対立が本当の友情なり
記憶に残りし幻
「自由の歌」
「合唱」




The Marriage of Heaven and Hell

『天国と地獄の婚姻』
            翻訳 積 緋露雪

要旨。

リントラが重重しき空気の中にて己の炎を轟轟と打ち震はせてをり、
飢ゑたる雲雲が深淵の上に垂れ込め

嘗ては柔和な、そして一本の危険な小路に、
まさしく正しき人間が死の谷に沿ってその道筋を進み行き。
棘が生えし処には薔薇が植ゑられてをり。
そして灌木の生えたる不毛な荒野に
蜜蜂が歌ひし。

それから危険な小道には草木が植ゑられ。
そして一筋の河、そして一つの泉
あらゆる断崖と墓の上に、
そして白骨の上には
赤土が生じし。

悪漢が楽なる道道を去る迄、
危険な道を歩く事を、そして
正しき人間が不毛な土地を邁進する事を。

今、頭を突き出した大蛇が蛇行す
柔和な謙遜の中を
そして正しき人間が獅子のうろつき回りし荒野で
憤怒せし。

リントラは重重しき空気の中にて己の炎を轟轟と打ち震はせてをり、
飢ゑたる雲雲が深淵の上に垂れ込め


或る新しき「天国」が始まり、そして、現在、基督降臨から三十三年なりし、
「永劫の地獄」が再興せり。そして、見よ! スウェーデンボルグが墓に坐りをりし天使になりつ。彼の著作は折りたたまれし麻布。今、エドムの支配下である、そして「楽園」にアダムが戻りし。イザヤ書三十四と三十五章を見給へ。
「相反するもの」がなければ進歩なし。「引力」と「斥力」、「理」と「活力」、「愛」と「憎悪」は、「人間」の存在に必須なりし。
それら反対するものが湧き出す泉から宗教においては「善」と「悪」と呼ばれるものが湧き出し。「善」は「理」に従ふ受動的なものなりし。「悪」は「活力」から湧き出し能動的ものなりし。
「善」は「天国」。「悪」は「地獄」。

「悪魔」の声

あらゆる聖書若しくは聖典。以下の「誤謬」の因なり。
1. 「人間」こそ二通りの存在の原理がありし、即ち、「肉体」と「魂」。
「活力」こそ「悪」と呼ばれ、「肉体」からのみなり。そして、「理」こそ「善」と呼ばれ、「魂」のみからなり。
2. 「神」こそ以下に書き記せし自身の「活力」のために「永劫」の地獄の刑罰に苦悶する「人間」であらう。
しかし、以下に綴られし「相反するもの」の数数は「真実」なり
1. 五感によって関係する「魂」の一部である「肉体」と呼ばれしものに関して「人間」は自身の「魂」と区別される「肉体」を持たず、この時代が「魂」の主なる入口
2. 「活力」は唯一生でありそして「肉体」から生じそして「理」は「活力」の限界若しくは「肉体」の外的な限界なり。
3. 「活力」は「永劫」なる「喜び」なり


 欲望を制限する人人は彼らのものが制限されるに十分弱い事より制限されし。そして制限するもの若しくは理性的なるものはそれに取って代わりし、そして不承不承に統治されし。
 そして程度によってそれが制限される事は受動的なり、遂にそれが欲望の影にのみになりし。
 この歴史は『失楽園』に書かれし。そして、「統治者」若しくは「理」は「救世主(メシア)」と呼ばれし。
そして本来の「大天使」若しくは天上の主が所有する軍隊の所有者は、「悪魔」若しくは「大悪魔」と呼ばれそして彼の子は「罪」と「死」と呼ばし。
しかし、「ヨブ記」の中では、ミルトンの「救世主」は「大悪魔」と呼ばれし。
 何故ならこの歴史は両派により受け入れられし
 それは「欲望」が投げ棄てられるかのやうに実際、「理」に対して現はれし。しかし、「悪魔」達の審判は「救世主」が倒れる事なり、そして「奈落」から救世主が盗みしものにより一つの天界を創りし
 此の事は福音書に見られし、彼は団欒が若しくは「理」が「理想郷」を打ち建てし「欲望」が送られむ事を「父」に対して祈りし、聖書のエホヴァは将に彼ぞ、その彼は燃え立つ炎の中に棲みし。「基督の死」後を知るべし、彼はエホヴァになりし。
 しかし、ミルトンにおいて、「父」は宿命であり、「息子」であり、五感の或る「比率」になりし。そして「精霊」、「虚無」!
 注釈。理性的なるミルトンは、彼が「天使」と「神」について書きし時、媚び諂ひ書きし、そして「悪魔」と「地獄」については自由闊達で、それは彼がさうとは全く知らずに真実の「詩人」であり「悪魔」派故なり

記憶に残りし幻想

 吾が地獄の炎の中を歩きし時、「霊」の愉悦で歓びし。「天使」にとっては劫罰で異常に見えるが、吾は彼らの幾つかの「諺」を集めし。その謂はれが或る国で使はれるやうに考へつつ、その文字に印をつけて、「地獄の諺」は以下のやうに、建物や衣服を描くよりもよい[地獄]の智の性質を示してをりし。
 吾が家に帰りし時、五感の奈落の上に、或る平面が現実世界を覆ひつつ険しいしかめっ面をその両側にあしらへて、吾は見し、黒雲に囲われし或る強力な「悪魔」を、両側の巌の上を漂ひつつ侵食する炎と共に、彼は今、人間の感知出来る以下の文章で書き記す、そして、地の上でそれらを読みし。


 あなたは、あらゆる「鳥」が将に天空を切り裂きつつ飛翔するのは如何様にしているのかを知りしか、
 広大無辺なる歓びの世界はあなたの五感により閉ぢられしか?

地獄の諺

種蒔きの時に学び、収穫の時に教え、冬に歓べ

あなたの荷馬車と犂(すき)とを死の骨の上で駆り給へ。
 やり過ぎる過剰をして辿りし道筋は智の王宮に導きし

 思慮深さは無能により得られし裕福で醜悪な年老いた処女なり。
行動せずにのみ欲望するものは悪病を育む。

切られし蚯蚓(みみず)は犂を忘れじ。
水を愛せしものは河の中で堀るべし

莫迦者は賢者が見るやうに同じ木を見ない。
光なし面(おもて)を与へられしものは決して星に為れず。
永劫は時が創りし愛にある。
忙しき蜜蜂には哀しむ暇などなし。
愚なる時間は時計で計られし、しかし、智の時間は、時計では計れず。

あらゆる健康に良い食物は網や罠なしに捕へられし。
死の年に重さと秤の数字が齎されし。

如何なる鳥も高すぎる飛翔はせず。鳥が己の翼で飛翔する限り。

一柱の死体は、怪我を以て復讐せず。

もっとも高貴な行為はあなたの前の他人を座らせる事なり。

愚者が己の愚かさに固執するならば賢者にならむ
愚かさとは悪業の衣服なり。

羞恥は「矜持」の衣服なり。

収容所は「法」の石にて建てられし、昌家は「宗教」の煉瓦で。
孔雀の矜持は「神」の栄光なり。
山羊の肉欲は「神」の賜物なり。
獅子の激怒は「神」の智なり。
裸婦は「神」の作品なり。

哀しみの過剰が笑ひなり。歓びの過剰が咽び泣きなり。
獅子の咆哮、狼の遠吠へ、嵐の海の憤怒そして破壊する剣は人間の目には偉大過ぎる永遠の一部なり。

狐は己ではなく罠を非難す。
歓びは受胎せし。「哀しみ」は産まれし。

男は獅子の凶暴を着用し、女は羊の毛を纏へ。
作品名:天国と地獄の婚姻 作家名:積 緋露雪