小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
積 緋露雪
積 緋露雪
novelistID. 70534
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

乖離する吾

INDEX|19ページ/19ページ|

前のページ
 

そこに異形のものの表象を再現前させながら、
「おれとは?」と何時も謎かけをしてくる異形のものたちは
へっ、全てこのおれが造ったものなのだ。

それが当たり前のことだと知りながらも、
異形のものたちは、それでもおれを喰らふべく頭蓋内の闇の中で、
或ひは瞑目した瞼裡の闇の中で待ち構へてゐる。
さう思はずには最早一歩も歩けなくなってしまったおれは、
強迫観念にでも犯されてゐるに違ひないが、
そんなことはおれの存在にとっても、
異形のものたちにとっても痛くも痒くもなく、
唯、此の世に佇立する緊張感に翻弄されながらも、
おれは立つのだ。

この二本脚で立つことでしか、
異形のものたちと対峙する術はもう残されてをらぬ。
おれにとって、おれの存在自体が弱肉強食の態を為してゐて、
おれが存在する事が既に喰ふか喰はれるかの瀬戸際でしかなく、
その有様は、世界の縮図でなくてはならぬのか。

さあ、喰ひたきゃ喰へばいい。
おれの意識と肉体を失ってすらおれは魂魄となり、或ひは念となってでもここに立つ。
それが定めといふものだらう。


ふらつきながらも

道なき道をふらつきながらも一歩一歩と進むその姿勢に酔ってゐるのか、
陶然とするおれは、悲劇のにでも為ったとでも思ってゐるやうで、
全く唾棄すべき醜悪な悪臭をプンプンと放ちながら、
此の世に実存してゐるその実存の仕方が全くお粗末なのだ。
それは自覚しながらもおれは、しかし、その醜態が居心地がいいのだ。

そんなぬるま湯に溺れながらも
泰然自若としてゐられぬならば、
生存する価値すらないのか。

緩やかに蒼穹を流れる白雲に押し潰されたやうに
ぐしゃりと潰れたおれの意識は、
そんなふらつく足取りのおれを見事に見捨てるのだ。

さて、意識が潰れた畸形のおれは、
勿論、軀体も同様に歪んでゐて、
その挙げ句、潰れた意識を忘却するべく、
おれは、道なき道をふらつきながらも一歩一歩進んでゐる。

さうやって己に酔ふ事でおれは潰れたおれからまんまと逃げ果せてゐるのだ。
それでも蒼穹には相変わらず白雲が流れ、
地平線は蒼穹の奥へと消えてゆき、
おれは自分の位置をすっかりと見失ったゐた。
作品名:乖離する吾 作家名:積 緋露雪