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テッカバ

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 確かに、江戸の遊び人を現代チックにしたようなコーディネートは、飄々とした彼の性格にピッタリだ。今の彼なら、違和感なくギャンブラーと呼べる。
「あっ! ミッチーだ!」
 唄方くんに気付いた例のボブカットの子が、彼に抱きつく。小柄な彼女と唄方くんじゃ身長差が結構あるので、脇腹にしがみつく形になる。
 ミッチー……? と考えて、唄方くんの名前が道行だったことを思い出す。
「祐善さん、二十歳手前の男にミッチーは止めて下さいよ」
「えー! じゃあ、“ミッチー”と“ウータン”ならどっちが良い?」
「どっちも勘弁して下さい……」
 そう言いながら祐善と呼ばれた女の子を、体から優しくひきはがす唄方くん。その仕草は妹を可愛がるお兄ちゃんみたい。
 普段誰かと居る様子の無い彼女も、唄方くんにはなついているようだ。
「えっと、唄方くん。この子と知り合い?」
 さっきされた質問をそのまま返す。見る限り、私よりこの二人の方が仲良いもんね。
 唄方くんは頭の後ろをかきながら、
「ええ、仕事仲間みたいなものです」
 ――仕事仲間?
 彼の仕事というのは当然賭博師だろう。で、その仕事仲間ということは……。
 凝視する私に向かって、女の子はポケットから取り出したIDカードを突きつけた。
「鉄火場の賭博師ギャンブラー、スペードの5と言えばこの私、“科学色の小悪魔”こと祐善(ゆうぜん)奈々子(ななこ)のことだよ!」

 ――私が二度目に彼女を知ったのは、最初の事件の三日後の学生食堂でのことだった。
作品名:テッカバ 作家名:閂九郎