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テッカバ

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 とにかく新しい仲間を一刻も早く確保しなくてはならない。確保して、崇めさせて、私が人々の上に立たなくちゃいけない。私の方がそこら辺に居る人間よりも全てにおいて上なんだから、私が彼らを束ねてあげた方がお互いの利益になる。
 そう考え、入学早々さまざまなクラブや研究室を回った。何事も自分で一から作るよりも、今あるものを自分の物にする方が早い。しかし、簡単に自分がトップになれて、なお且つ後々の自分の経歴に花を添えるような集団というのは中々存在しなかった。
 そしてとうとう見つけたのが高槻ゼミ。現在の所属人数は少なく、高槻教授は電子工学が専門ながら、個人的な伝手で財界に顔がきくことで有名だったのだ。一年の内はゼミに参加することは出来ないが、学年が上がるまで見学と称して通いづめれば、いざ参加した時に集団の中で優位に立ちやすい。それまでは適当なクラブに入って末席として穏便に過ごしていれば良いだろう。
 そう考えた私は目標を高槻ゼミに定め、その日の飲み会について行った。
 ――そしてはめられた。
 初めての屈辱。初めて他人に見下される思い。……耐えられなかった。
 高槻は正確には写真を学校と両親ではなく、我が家の議員を代々排出してきた選挙区のライバル議員に流すと脅迫した。自分の家柄がステータスになった事は多々あれど弱点になるの初めてで、それをさらりとやってのけた高槻はまさに人生初の障害、人生初の私より人の上に立ち慣れている男だったのだ。
 父は良く言っている。選挙ではイメージが何より肝心だ、と。仮に飲酒の事実が不確かな写真でも、ネガティブキャンペーンの材料には十分過ぎるだろう。
 憎い、憎い、憎い!
 今の私の根本を支えている家を危険に晒すわけには行かない。出会ってから数時間であっさりと私を屈服させた高槻という男が何より憎かった。

 意を決してドアに手をかける。開かない。
 高槻は用心深い男のようだったから、基本的に鍵をかけているのだろう。仕方がないからノックする。
 数秒の間の後、ドアを僅かに開けてこちらを探る高槻。立っているのが私だと分かると何の疑いも無く部屋に入れた。
「やれやれ、夕方まで待ち切れなかったのかね?」
 ざわり。怒りが波紋して全身を伝う。
 誰がお前なんかに……、家のことさえなければ誰がお前なんかの言う事を聞くか……。
作品名:テッカバ 作家名:閂九郎