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積 緋露雪
積 緋露雪
novelistID. 70534
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闇へ堕ちろ

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これから1000年後に人類が存在してゐるならば、
ピアソラの音楽は必ず残る筈で、
テロリストのそれは
単なる事象として数字で片付けられる外ないのだ。

さうすると、ピアソラの叙情味あふれる音楽の哀しさと
テロリストの本質に横たはる哀しみを比べても、
テロルは時間が経つに連れて記憶外に葬られるが、
ピアソラの音楽は人類が存続する限り
厳然と残るものに違ひない。

この差をピアソラの音楽は絶えず私に突き付けてゐて、
――ほれ、お前も「無」から「有」を生み出せ。
と、叱咤するのであるが、
しかしながら、私はといふと
こんな詩のやうな文字の羅列しか書き綴る事が出来ず、
さて、困った事にピアソラに対峙する文(ふみ)を生み出すには
未だに苦悶が足りず、
その事で呻吟するのであるが、
だからといって、人人に衝撃を与える文を書く事が出来ずに
迷ひに迷ひながら何とか「現在」を生き抜けてゐるのみなのだ。

――それでいい。
と私に囁く《異形の吾》がゐなくもないのであるが、
それは抛って置いて
私は唯唯内的自由に溺れる日日にご満悦なのも事実なのだ。



妖精

彼女は不意に私の眼前に現はれて、
私を蠱惑の世界へと連れ去った。
何よりも彼女は私を官能的な仕草で誘惑し、
私はといふとその誘惑に素朴に溺れた。
何であらうか、
彼女は直ぐさま裸婦に姿を変えて、
私の唇に唇を重ねた。
私は彼女を撫で回し、そして、彼女の柔らかい胸を弄り、
さらには、太腿を撫で回した。
私が触れる度に彼女は喘いで、更に私を誘ふのだ。
彼女の秘めたるところは既に濡れてゐて、
いつでも私を受け容れる準備は出来てゐたのだが、
私はといふと小賢しくも彼女焦らすのだ。
さうすると、彼女は私の秘めたるものを強く握り、
さうして色っぽく嗤った。

――あなたはまだ、子どもね。可愛い。

と、彼女が私の唇を嘗めながら囁いたのだ。

私は尚も貪るやうに彼女の肉体を求めて、
なり振り構はず彼女を愛撫した。
すると彼女は笑ひ転げて、
私の秘めたるものを弄った。
さうして、有無を言はせず、
私のものを彼女に挿入し、
私の上へと覆ひ被さってきた。
更に、腰を振る彼女は、
更に喘ぎ声を上げながら、
私のことなど目もくれず、
独り、己の官能の愉悦に溺れてゐた。

――ああっ。

と一言喘ぐ度に、彼女はその姿の正体を次第に現はし、
真白き柔肌の妖精(ニンフ)へと変身を遂げたのだ。

私はといふと、何の事か理解出来ず、
しかし、官能が醸し出す愉悦に溺れた。

――ああっ。

彼女の其処はひくひくとひくついて、
私のものに吸ひ付き、
何やら官能的な香りを漂はす。
その香りにやられた私は、一気に絶頂を迎えて、射精した。

すると妖精はけらけらと嗤ひ、
しかし、顔を赤らめながら、痙攣してゐるやうにも見えたのだ。

彼女は私の子どもが欲しかったのか。
それとも単に誑かしたかっただけなのか。
しかし、そんなことなどどうでもよく、
眼前に横たはる彼女は、次第に真白き球体に変化し、
そして、何処にか消えた。

これ以来、彼女はたまに私の眼前に現はれては、私の精液を吸ひ取って
そして、姿を消すのだ。

しかし、これが夢だと言ふ証拠がないだけで、
何時も官能的な香りを残す彼女が妖精だと言ふ証拠もないのだが、
こんな私に都合がいい女は此の世に存在する筈がなく、
私はこれは白昼夢でしかないと割り切って生活してゐるのだ。



哀歌 二

黄昏時の哀しみに躓いてしまった。
何てことか。
まるで一生ぼんやりと
眼前の形が形としての映像を結ばない曖昧模糊とした世界を
漫然と眺めてゐる阿呆と何処が違ふといふのか。
或ひは俺は盲人か。
何にも最早見えないではないか。

嘗て汚れちまった哀しみを歌った詩人も、
こんな哀しい黄昏時を味はった事はないかも知れぬ。

俺にとっては至極当たり前の事なのだが、
何時も哀しみに蔽はれし心身は、
既に自己とふ名の殻に閉ぢ籠もったといふのか。

漫然とした哀しみほど残酷なものはないのだ。
何故って、最早その哀しみは霊の如く憑依して
俺を俺以外の何かへと誘ふ端緒としてしか俺の存在を認めぬのだ。

この哀しみを知るものは
既に此の世を去ってしまったものばかりに違ひない。
この哀しみの中で生き残るなんて馬鹿しかできぬ神業なのさ。

ぢっとしてゐると、どうしやうもない哀しみが
心に滲み出てきて、あっといふ間に心全体を蔽ふのだ。

何て重たい心だらう。
哀しみにうちしがれし心は、
私に空いた穴凹然として
巨大Black holeの如く哀しみのどん底へとまっしぐらに
俺を誘ふのだ。

この重い心が既に俺には持ち切れず、
落下するに任せてゐると、
哀しみのFractalな形状がやがて見え出し、
底無しの俺に空いた穴凹に俺は落下する中でも、
何の事はない、俺は俺を楽しさうに抱いてゐるのだ。
俺が俺を手放すなんて現時点ではあり得ぬのだ。
どんなに世界が哀しくとも。

へっへっ、と不意に嗤った俺は、
哀しみが最高潮へと向かい、
絶望を呼ぶ黄昏時に
既に俺をしゃぶってみては
俺を喰らひ始めて、
さうして俺を磨り減らしては、
重すぎる俺の心を少しでも軽くする努力をするのだが、
そんな事は無駄な足掻きに過ぎず
既に重すぎた俺の心は
俺の心の閾値を超えて、
俺から飛び出てしまってゐるのだ。

何処を彷徨ふ俺の重き心よ。
今すぐ俺に戻ってこい。



弥次郎兵衛

両腕に等量の重りを抱き、
脚の如き一本の心棒でBalance(バランス)をとる弥次郎兵衛は、
果たして、その平行を打ち破る打撃を加へられ、その心棒がポキリと折れて、
地べたに這ひ蹲るのか。

―さうさ。さうぢゃなくちゃ、此の世の不合理は何ものも堪へられぬではないか。弥次郎兵衛は理不尽に打ち壊されて、さうして神の脚に踏んづけられるのだ。



盈虚

月あらば、人ありき、か?
雲間にその顔を仄か出す青白き太陽光を反射する月の面は、
私をかぐや姫の如くに月へと誘ふ。

――何を詩情に浸ってゐるのか! 人なくとも月ありきさ。人の存在なんぞ、芥子粒の如きと遙か昔より言はれてゐるではないか。人の存在を云云する以前に世界の不合理を暴く事が先さ。そら、月が盈虚して嗤ってゐるぜ。




快楽音楽主義者

Rickie Lee Jonesが歌う「My funny Valentine」ほど心に響く
つまり、心の琴線に直截的に触れる歌をこれまで聴いた事がなかったのだが、
この感動はもう何年前のことだらう。
彼女の歌声が忘れられず、
その時から彼女の作品は必ず聴く事になったのだのであったが、
その彼女の歌声はChet Bakerのそれにも勝る物で、
My funny Valentineがこんなにも美しい歌だった事を
改めて知らしめられた彼女の歌声は、
実に滋味深く、美し過ぎるのだ。

それは、私の心の共鳴板と確実に共鳴してゐて、
彼女の歌声は私の頭蓋内で猛烈な増幅をし、頭蓋内部で美しい轟音となって
鳴り止まなくなってしまったのだ。

それ以来、私はRickie Lee Jonesに勝るとも劣らぬ歌声を求めて
手当たり次第にポップスを聴くやうになったが、
作品名:闇へ堕ちろ 作家名:積 緋露雪