Zealots
「あの子は、家にずっと捕らわれてる。自由に喋れるのは、おれが送迎するときだけなんだ。その親父ってのは、まともな奴なんだろうな?」
小崎が言うと、姫浦は首を傾げた。
「父親だということは確かです。私と同業でしたが」
「本当に、大丈夫なんだろうな?」
その責め立てるような口調に、姫浦は一度瞬きをした。
「これでは、どっちが父親か分かりませんね。その銃、地面に置けますか?」
小崎は、返事の代わりにアンダーカバーを地面に捨てた。姫浦はP227をホルスターに仕舞うと、言った。
「あなたが竹尾を撃つとは、思いませんでした」
「潮時だよ。堂山は元気にしてんのか?」
ブレスレットや、コートの主。生きているとは思えない。小崎はほぼ諦めた口調で訊いた。姫浦はブレスレットを外して地面に捨てると、首を横に振った。
「申し訳ないですが、堂山は殺しました」
「どうして、こんな回りくどいことをしたんだよ?」
小崎が言うと、姫浦は肩をすくめた。
「護衛に絶対見つかってはいけないという、指示があったからです」
「それなら、先に全員殺した方がいいって思ったのか?」
小崎が呆れたように言うと、姫浦はうなずいた。
「そう、教えられました。殺す相手とは、まず友達になれと」
しばらく間が空いた後、小崎は笑った。だとしたら、今の自分が答えるべき言葉は、ひとつしかない。
「じゃあ、まずはおれから始めろよ」
矛盾しているようだが、例えそれで命を落とすことになるとしても、自分の中で筋は通っていた。
凛奈が自由に羽ばたけることを、心から願う以上は。