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ボクとキミのものがたり

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【ひまわり】




カーテンの閉じられたボクの寝室。
暖かな陽射しをたっぷりと浴びたふっくらした布団で眠りについたボクは、いつまでもお日様と柔らかな香りのするベッドから離れたくないのか、キミと遊ぶ夢から覚めたくないのか、まどろみの中から抜け出せないでいた。

枕の下においていた携帯電話が震えた。それと同時にキミからのメールを知らせる着信音で目覚めたボクが居る。
「おはよう」
携帯電話に向かって声を掛け、メールを読む。
『待っててにゃん』
それだけ? まったくキミのメールは、挨拶もなければ、いつとか、どうとか何もない。
此処に来るということだけが、何となく伝わるだけだ。
まあ、連絡があるのは、特別な何かがあるのだろう。会いに来るだけならば、いつも突然なのだから、待っているしかない。

ボクは、体を起こし、ベッドから抜け出した。先日から肌掛け布団に変えた所為か布団を撥ね退けるのも容易いし、たたむのも軽い。
頚をぐるりと動かし、こきこきと傾げ、両腕を伸ばせば、活力も目覚めた。

仕事場にしているリビングへと行き、キミと選んだ奇怪な模様のカーテンを開けた。
青空が広がり、気持ちの良い朝。いやこの陽射しは 昼に近いかもしれない。
仕事の机の上には、昨夜書き上げた原稿用紙。今回は、書いてから何箇所も赤ペンを入れた。ふと目をおとした箇所が気になってしまった。此処は今回のポイントだと担当者との得心がいかず苦心したところだ。
時計を見る。いつもキミが気にかけるようになった勝手に時間正確な電波時計で時間を確認すると、ボクは、浴室へと向った。
上半身を脱ぎ、頭からぬるめのシャワーを浴びた。少しはしゃきっとした気分になれた。
タオルで水気を取りながら、机へと向かう。肩にタオルを掛け、原稿を読み返す。
そのうち、万年筆と赤ペンを手にして書き直し、読み直し、いつも通りのボクは、キミが来ることさえ忘れかけていた。(ごめんね)
キミの気配を背中に感じたのは、それから暫くしてからのことだった。
部屋の空気が動き、キミが運んできた甘い香り…バニラビーンズなのかな、洋菓子店の前を通ると香る匂いがした。

作品名:ボクとキミのものがたり 作家名:甜茶