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ボクとキミのものがたり

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図書館のテーブルは、いつもの小さな机に向っているボクには広く 少々落ち着かない。
いや、使うスペースは、さほど変わるわけではない。違いといえば、いつもは、背中に感じるキミの気配を、正面から どどんと感じるからだろう。
本を読みながらだから、確信はないものの キミの視線が 流れてくるような気がする。キミは、本を開いて読むふりをしながら、ずっとボクのほうを眺めているんじゃない?
それって、ボクの自過剰だろうか?
ボクは、キミの誘ってくれた此処で書こうと思う文字が浮かんできた。
「少し、書き物をしていい?」
キミは、今、本から目を離したように とぼけた表情で えっと聞きなおし、微笑んだ。

ボクが書いていても、その姿を眺めるキミの視線を感じる。
(図書館に来てみても、何も変わらないな。なんだか落ち着く)
本の上から覗くキミの瞳が、キミの気持ちを見せているとすれば、いつもよりちょっぴり楽しそうに見えるよ。こんなデートでもちょっとは満足してくれているかな。
ボクも そんなキミをコソっと眺めている。

いつしかキミの姿を目で追わなくても ボクの脳裏の片隅に居座っているようだ。
場所もあまり気にならなくなってきた。
此処が図書館だということも忘れ、原稿に向うボクが居る。
ボクの万年筆も 書きたい気持ちや言葉を知っているかのように 滑らかに原稿用紙の上を走り始めた。
その後も 新しい本を取りに席を立つことはあったけれど、気持ちは途切れなかった。

暫くすると、静けさの中で ぐぐっと奇妙な音が聞こえた。
本に顔を隠すキミの様子から キミの正直な腹の虫の叫びだったようだ。
「お腹空いた? 何処かへ出ようか」
ボクは、万年筆のキャップを被せ、キミを見た。
「ん~にゃお」
キミは、此処の地下一階に飲食スペースがあり、売店でパンやおにぎりなどの軽食と飲み物を食べることができると教えてくれた。
「じゃあ、休憩しようか」

作品名:ボクとキミのものがたり 作家名:甜茶