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ボクとキミのものがたり

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あの日。
そう、キミが急に「今から 行って来る」と決心して、ボクの前から去って行ったあの日。別れ際にメールで届いた携帯電話の番号と新しい住所に、ボクは何もしなかった。
「待っていてね」と言ったキミのことを待つことしかできなかった。
〝いつ〟という期日のない再会の約束を交わしたことなど、ボクにとっては初めてのことだった。だから、本当のところ 数日はどうしていいか困惑ばかりしていた。
夜は、まだ良かった。目も適度に疲れ、こっくりと居眠りを始めるまで過ごせば、ぐっすりと眠ってしまう。夢の劇場も休業してくれた。
しかし、覚えている二度の夢の劇場開演は、目覚めたボクの記憶から離れず、楽しくて嬉しくて喜びがあり、そして淋しさを残していた。
仕事で机に向かっているときに、ふとキミの不思議さを感じることがあった。考えが纏まらなかったり、休憩しようかと思ったりすると、何やらキミがボクの興味を惹いてくれる。

仕事。
そういえば、ボクは、キミに仕事のことを話したことはなかったね。
関心がないのか、興味も湧かないのか、何も尋ねてはこない。聞かれても少々照れくさい感じは否めないが、放って置かれるおかげで、集中もできる。
万年筆と原稿用紙。書き物を職業にしたわけだけれど、キャッチコピーや商品の印象を綴るキャッチフレーズを書くコピーライターの端くれだ。
そのきっかけとなったのは、キミだったね。

作品名:ボクとキミのものがたり 作家名:甜茶