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ボクとキミのものがたり

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そんなボクをキミは覗き見る。
「嬉しそうだね」
「そっかぁ?」
「そう見える」
「じゃあ、そうだね」
「そっか、じゃあ少し待っててあげるね」
(おいおい、キミのために入ったんだぞ…ってこれ可愛いな…)
ボクは、二、三点手に取って見てしまった。キミはといえば、きょろきょろと見てはいるものの、ゆっくりとした歩みを止めることはしていない。
店内を、ほぼ半分ほど見たけれど、やっぱり落ち着かないボクは、背中を向けているキミに「そろそろ出る?」と声をかけた。
キミは、ハードカバーの表紙のノートを眺めていた。硝子に描かれたエンジェルのようなイラストが盛り上がり描かれているノートだった。
「気に入ったの?綺麗なノートだね」
キミは、そのノートを棚に戻そうとした。
「プレゼントするよ」そういってノートの端をボクも掴んだ。
「ううん、これは 此処にあるのが似合ってる。売り物だろうけど」
「可愛いから、きっと売れちゃうよ」
「それでもいい。私が此処から持ち出したくないだけだから」
そう言ったキミの表情が、何故だか少し曇ったように感じたボクは、それ以上薦めるのをやめた。
「わかった。……じゃあ行こうか」キミが棚に置くのを待ってボクたちは、店を出た。
外は、すっかり暗くなっていた。ボクたちが背にしている店の明かりでふたりの影が重なっていた。ボクは、キミの存在を意識してしまい、少し離れた。
「寒くなってきたね。部屋へ帰ろうか?それとも……」ボクは、言おうか一瞬戸惑った。
「家まで送って行こうか?」ボクは、キミと手を繋ごうと差し出した。
キミの手がボクの掌に包まれるように重なり、ボクは、その手を握りしめた。
柔らかなキミの掌は、ボクの気持ちを素直に受け止めてくれるように思えた。

作品名:ボクとキミのものがたり 作家名:甜茶