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ボクとキミのものがたり

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【帰り道】




喫茶店の窓に射し込む オレンジ色の夕陽がキミの頬も染めて健康的な笑顔が目の前にある。ボクは、いつまでもキミの笑顔を見つめていたいけれど、もう飲み物も飲み終えてしまった。外にまだ夕陽が見えているうちに オレンジ色に照らされた道をふたりで歩いてみたいと思うボクがいる。
キミがふと見つめ返した目がとても可愛く煌めいた。いやそんなふうにボクには見えただけなのだけど、だんだん照れくさくなってきた。

「さてと、お出かけの続きしようか」
ボクは、キミの了解もえないままに立ち上がり、会計を済ませる。その後ろでボクを待っているキミの視線を、その背中に感じたように思った。見ているのだろうか。
「行こうか」振り返りキミに声をかけた。
「うん。あ、ごちそうさま。……で いい?」
「うん。いいよ」
滅多にない機会だ。ボクの薄っぺらな財布だって見栄を張りたいに違いないが、一番小さな単位の紙幣を一枚出しても お釣りが数個返ってきた。ボクは、小銭を財布の中に仕舞い込みながら出口へ向った。
「ごちそうさまでした」ドアに向うボクの後ろで、キミが店の人に声をかけた。ボクも慌てて振り返り、頭をひょこっと下げた。キミの笑顔にまた会った。
店の外に出ると、ボクは、照れくさい表情をキミに悟られないように足早に歩いていった。ズボンの左ポケットの裏生地が出ていたので押し込んでいると 腕を曲げた空間にキミの手がくぐってきた。
「にゃお・・・・」キミが、何か言ったようだけれど、ボクの耳はそれを捉えられず、
「え?何?」と聞き直した。キミは、「ううん、何にも」とボクを見上げて言った。
夕陽は、キミを照らしているようにボクの顔もオレンジ色にして照れているのを隠してくれるだろうか。
そうこう思う間に、夕陽はみるみる沈んでいった。

作品名:ボクとキミのものがたり 作家名:甜茶