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ボクとキミのものがたり

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カレと出会ったあの日。そう珍しく大雪が降ったあの日は、我が家は、少し早いクリスマスパーティをしていた。パーティといっても 家族だけの、言うならワタシのためのようなものだった。「こういったホームパーティは高校生までね」との約束どおり、高校三年生のワタシにとっては、最後のこと。お父様は、ワタシにプレゼントを。お母様は、朝から作ったお料理を用意してくれた。
淡いピンク色のテーブルクロスを掛けたテーブルには、デコレーションケーキとキャンドルが置かれ、お母様のお料理が並んでいた。クリスチャンではない家庭だったが、「メリークリスマス」と声を上げれば、楽しい雰囲気になった。大好きなお料理は、その夜も美味しかった。お父様は、赤と緑のリボンが結ばれたシャンパンを開けて、グラスに注いで飲んでいた。お父様やお母様とのお話もその場を楽しく盛り上げた。そのうち ワタシは、お腹も程よく満足して、あとは お気に入りの洋菓子店のデコレーションケーキを食べるだけだった。
ワタシは、プレゼントで頂いた欲しかった新しいソレのイヤーフォンを耳にはめた。
お父様の選んだ曲が、何曲か入っていた。
ときどき、お父様とお母様の様子を窺いながら、耳元に流れる曲を愉しんでいた。
そんな中、少しお父様とお母様の動きが違ってきた。
お母様は、持っていたフォークをテーブルに置いて 少し恐い顔でお父様に何か言っている。お父様は、立ち上がったかと思ったら、手にしていたシャンパングラスを傾け、テーブルの上のキャンドルに零した。そして、厳しくも 哀しい顔だった。
ワタシは、声もなく、ゆっくりと 耳からコードを外した。
キャンドルの最後の音が、小さく消えていったが 妙に耳に残った。
お母様の涙と、聞きたくない声が お父様にぶつかり、ワタシの好きなお父様の低い声が
荒立ってワタシに届いた。
「部屋に 行っていなさい」お父様のその言葉でワタシは、リビングを出た。
リビングの扉が閉じても 僅かに漏れる声は、ワタシの足を部屋へと向けず、屋外へと走らせた。
(其処から 離れたい)
ただそれだけ……だった。

作品名:ボクとキミのものがたり 作家名:甜茶