小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

ボクとキミのものがたり

INDEX|17ページ/177ページ|

次のページ前のページ
 


机の上の片っぽだけの柔らかな毛糸の手袋がしな垂れて、見ようによってはガッツポーズをしているようだ。
(よし!手袋も応援してくれているぞ)
「あ、手袋、片方落としていったでしょ。はい、ここにあるよ」
(よし!とりあえず、出だしは順調だ)
「ありがとう。もう片方はその前に失くしちゃったの」
「…あ、そうなんだ。んじゃあ、置いていったのか」
キミは、頷く。
「何処……キミの自由だけど、何も言わずに出かけてしまうのはどうかなぁ」
「手袋で『行ってきます』を表してみました」
(やっぱり、あれは 暗号だったのか。これは正解!)
「あれじゃあ行き先も、いつ帰るかもわからないでしょ」
「そうだね」
(キミは、何て笑顔をボクに向けるんだ)
文句のひとつひとつが、プチンプチンと弾けて消えていってしまいそうだった。
「どうしたの?……どうして、連絡くれなかったの?」
キミは、笑顔を作ったまま、いや、何とか保ちながら困った顔をした。
そして、人差し指を唇の前に立ててみせる。
「内緒?」
キミは、また笑顔で頷く。
ボクは、椅子から立ち上がり、キミの座っている敷物の上に身を移した。
卓袱台を退けて、キミの正面に座った。
「話そう……ってまず何から話そうか?」
キミは、横に置いてあった紙袋から包みを取り出した。
「はい、お土産」
ボクは、受け取りながら、観察する。お土産を。その入っていた紙袋を。
キミの行方の手掛かりになりそうなものは、ないだろうかと。
ちょっとした探偵気分。本当は、もっと切羽詰った気持ちではあった。
キミが、たたんだ紙袋を置いた時、キミのバッグが倒れた。中身が、僅かに飛び出した。
慌ててしまうその中に ボクの記憶の引き出しをひとつ開けるものが目に止まった。
(あれ?今のって……いや、見間違いかもしれないし)
「へえ、お土産かぁ。なんだ、旅行してきたんだ。何処へ行って来たの?」
よく見ると、知った百貨店のシールの端キレがくっついている。
おそらく、百貨店の催事場の物産展ででも購入してきたのだろう。

作品名:ボクとキミのものがたり 作家名:甜茶