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ボクとキミのものがたり

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この陽射しの眩しさも 突然部屋に飛び込んできたわけではない。昨日からカーテンを閉めていなかった。部屋に帰るまでは まだ硝子を赤く見せていた夕陽が沈み、暑さだけを残して辺りを暗く染めはじめた。遠くのマンションの階段なのか点灯しはじめ、道行く自動車のヘッドライトが窓にちらついた。一番星を観ることができた。たくさんの星が見える頃になってもキミは来ない。夜という時間がボクを包む。

いつもと同じじゃないか とひとりで噴き出したのは 虫の声も静まった時間だ。
軽くシャワーを浴び、キミの居場所の卓袱台の横で体を床に伸ばした。熱い体にひんやりと感じた。(気持ちいい)僅かに目を閉じたボクにのしかかるように睡魔が襲った。(たすけてくれぇ)なんてことは思ったかどうかは覚えていない。

気付いたとき…… いや目覚めたときというのが正しいのか 二秒ほど 自分が転がっている状況に(あれ?)と考えたがすぐに天井が上にあることに納得した。まあ 初めてでなかったことも判断が早くできた一因かもしれない。

背筋を伸ばし、体を起こすと首を左右に伸ばしたり捻ったり、みしみしっと変な音が心地よい。洗面所に向かう。と、その途中で手前の扉を開け、用を足した。(失礼しました)
洗面をし、顔を上げて鏡に映ったボクは いい男だ… と誰かが言ってくれないかと口角を上げてみた。久し振りに見事な寝癖髪だ。頬に一筋、床と敷物の段差の痕が付いていた。頬を擦ってみたが すぐには取れない。こんなことで年齢を意識するとは思わなかったと苦笑した。

徐々に明るさと暑さと蝉の声に 気分も上がっていくようだ。さきほどまでの少々くだらない思考は、本来やるべき思考の反発を煽ったようで 思いのほか原稿が進んだ。

作品名:ボクとキミのものがたり 作家名:甜茶