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ボクとキミのものがたり

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手元に暗さを感じ 蛍光灯のリモコンに手を伸ばした。
ん? ボクの鼻先に甘酸っぱい香りが横切った。気の所為か… じゃないぞ。
ボクの視野の中に あの場所が映り込んだ。フローリングの床の敷物の上の卓袱台(ちゃぶだい)の前にちょこんと座っているキミが居る。
足音もなく… 笑ってしまいそうだった。そっか 背中に感じていたものは、これだったのかなっと勝手にこじつける。

「あれ? 来てたの。気付かなくてごめんね」
「こんばんにゃん。お仕事続けて」
「あぁ。あ、いい匂いがするのはそれかぁ」
「キッチン借りるね。なるべく静かにするから」
キミは、卓袱台においていた包みを持って立ち上がった。
ボールを取り出し、洗い始めた。食器棚から器を出したり、引き出しを開けたり もうすっかり此処のキッチンにも慣れたみたいだね。

ボクもひと段落。仕上げることができた。デスクの椅子をくるりと回してキミを見つめる。
キミもちょうどキッチンから出てくるところだった。
キミの手に硝子の器がふたつ。その中に 赤い実が盛り盛りに入っている。
「休憩…… にゃん?」
「あぁ、もう終わったよ。それ どうしたの?」
「今日の父との用事は、苺狩りだったの。知人が苺ハウスを入れ替えるから 全部取って欲しいって」
「なんだか 凄い依頼だね」
「そうなの。コレの倍の倍の… とにかくたくさん取れたの。それで我が家とお料理の先生のところとに分けて、まだまだあるから 持っていってあげなさいって」
「それは どうも」
「遅くなってごめんにゃん」
確かに 時間はおやつやデザートの時間というより 夕食時になっていた。

作品名:ボクとキミのものがたり 作家名:甜茶