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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
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殿下(続・おしゃべりさんのひとり言164)

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【第3章:御身分】

僕らはその方に丁寧に挨拶をしたあと、隣のダイニングで料理の準備として、用意した調理器具や食材を並べ終えると、すぐにする事がなくなってしまいました。思ってたより広いダイニングキッチンだったため、あっという間に準備が整ってしまったのです。
すると、御主人様が話しかけて来られたので、他愛のない世間話にお付き合いすることに。
その当時、僕は建築会社で営業の研修を受けていましたので、このお屋敷に興味が湧いて、色々とお話を伺ったりしていたのですが、
「家の中を案内させるし、観て来なさい」と言ってくださいました。そしてお手伝いさんに僕ら二人の案内を指示されました。
そんなやり取りの中で、僕はこの方に「ご主人さん」と呼び掛けていたのですが、お手伝いさんに廊下に連れ出されたところで、
「ダメですよ。『殿下』とお呼びしなさい」と、真剣な顔で言われました。
「??????????」
僕と彼女は、頭をフル回転させて考えましたが、空回りしてしまう感じで、その忠告の意味が解りません。
それもそのはず、京都でこういうお屋敷にお住まいだということは、何かしらか高貴な雰囲気を感じずにはいられませんでしたが、まさかこの方が、明治天皇生母の家系の長という御身分だとは思いもしませんでした。
そんなすごく重要な説明をボスから一切受けてませんでしたから、その時の僕らの慌てふためきようったらなかったでしょうね。

その御自宅の敷地内には、伊勢神宮から分祀した外宮の拝殿が庭に、二階の広間の床の間には内宮が祀られていました。
(何、この家?)僕らは(とんでもない家に来てしまった)と思いました。
その後、殿下には「大変失礼いたしました」と、“この上なく”、いや、“これより下がないくらい”に頭を下げ、先ほどまでの無礼を詫びました。
「気にせんでもええ。今日は料理を教えてくれる先生やからな」と、とても柔和な対応をしていただきました。その時、殿下から頂いた御名刺には、『明治天皇外戚 京 ○○家 当主』という添え書きと、氏名が記載されていました。

その後も緊張しましたが、遅れて到着したボスのおかげもあって、無事その日の仕事を終えることが出来ました。
そして、僕らより少し年上のお嬢様がこの料理教室を気に入られ、それから何回かそのお屋敷でワイン会が開催されるようになりました。そこに出席されるお客様は、このお嬢様のお友達が多かったのですが、参加者の皆さんとも仲良くなっていきましたので、ボスは出席されずに、最終的には僕と彼女が主催するようなイベントになりました。


【第4章:前世】

ある回で、お嬢様のお母様について、実は妾さんであると知りました。殿下の奥様ではないのに、このお屋敷にお住まいになっている理由が、「殿下をお守りするため」だと言うのです。
(??????????)また、僕らは想像が追い付きません。
その目的のために、どこかから派遣されて来られたのだそうです。
(どこから?)
奥が深そうで、闇が深そうで、それ以上は突っ込んで聞くことができませんでした。
どうやらこの妾さん、霊能力者だということです。
僕はすべて信じている訳じゃないけど、(信じるしかない状況におかれることもあるんだ)と思いました。この場で疑う素振りなんて見せられませんよね。絶対!
それからまたある日の回で、その妾さんが僕を見て突然、「霊視が必要だ」と仰いました。
(え? 何されんのかな?)と心配になりましたが、僕だけ二階の内宮の祭壇の前に連れて行かれ、祓詞なのか呪文なのかよく解りませんが、10分ほど祈っていただいたのか祓ってただいたのか、突然、
「お前は剣を失った剣士だ!」そう仰いました。
そして祭壇に供えてあった一升瓶を下ろされて、
「今晩これを彼女と差し向かいで飲みなさい。そうすれば力を取り戻せます」と言われ、有難くもそれを賜りました。
そのお酒の銘柄はなんと『剣菱』(神戸市灘の銘酒)でした。
偶然だったのかどうかは分かりませんが、(剣・・・ダジャレなのか?)と思いましたが、僕は畳に額を着けてそれを受け取りました。
こんな事があって、人に言うのもどうかとは思うのですが、僕の前世は(剣豪だったのかな)くらいに受け取っています。僕は剣道初段の腕前なので、それもまんざらでもないし。

知り合いにこの家の話をすると、
「そんなん名乗ってるようなヤツは、いっぱいおる」と言われました。
まあ、殿下と言っても、天皇家じゃないし、宮家でもないし、明治天皇に所縁があるってだけだから、一般人なんでしょうけど、お手伝いさんはもちろん、料理教室に参加されていたお客様も、妾さんやお嬢様まで、皆一様に「殿下」と呼ばれていましたし、僕らもそうする以外、仕方ありません。
ボスに聞いても笑うだけで、納得がいく説明は何も得られませんでしたので、僕らはただ、その世界観に合わせておくことにしました。
ところが、ある日僕は『真実』を目撃しました。