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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
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どんなルール?(続・おしゃべりさんのひとり言159)

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どんなルール?



「コラッ! 靴をテーブルに置くな!」
年配の男性が怒鳴られ、いきなり僕のシューズを床に叩き落された。
僕は(人のものを叩き落すなんて!)と憤りを感じました。でもその人は、
「お前は家で食卓の上に靴置くんか!」と怒っています。
こんな時、唖然として返す言葉もない・・・って心境って言えばどれくらい解ってもらえますでしょうか?

最近会社での朝礼を、部下が部長に昇格するので任せるようになりました。
すると彼は朝礼を行わず、ビジネス用LINEに連絡事項を送信するだけにしてしまいました。
各課の責任者がそれを受信して、課内周知を行う仕組みです。
以前は、責任者だけを集めて朝礼をして、そこでの情報を各課に持ち帰ってもらい、落とし込んでいたのを効率化した訳です。
ところが、その文章がLINEなのに、30~50行くらいあっては、逆に非効率じゃないですかね。
発信する側は、メールで来た情報をコピペしてるだけでしょうけど、「もっと要約しなさいよ」と言いたくなります。情報伝達だけでなく、相手に理解させることも大事でしょ。

昨今の仕事現場では電子ツールに頼り、人と人とのコミュニケーションが不足していると感じる場面が多くなってきました。
情報発信する側の語彙力にもよるのですが、受信者に間違った理解をさせてしまったり、単に転送するだけだったり、途中で伝達されなくなっていたり、そもそもその情報を受ける側が、送信された情報を全く見ていないということもあり得ます。紙の資料配布をやめて、誰でもデータベースにアクセスできるようにしたのに、その情報に自分でアクセスしない人もいます。どうやって仕事してるんでしょうか? 最近は日本語を話せない外国人まで雇っていますので、その心配は現実でしょう。
つまり情報が正確に伝わったか、互いに確認できなくなってきているのです。
僕はこれからの世の中って、これらが原因の単純トラブルがすごく増えると予想しています。

ところで僕はインドネシア語を少し話せるんですが、一生懸命勉強したのではなく、軽く1ヶ月ほどで参考書を暗記して、何回かバリ島に旅行しているだけである程度マスター出来ました。これって簡単なことだったんですよ。
それはインドネシア語って過去形や未来形さえない、語順が曖昧でもいい、すごく単純な文法のため、ある意味、単語さえ覚えればよかったからです。
でもそれで意思疎通が正確にできるとは限りません。あまりにシンプルな言語なので、どうとでも取れる表現があったり、インドネシア人同士でも勘違いは多く発生していて、待たされるのは日常茶飯事。そもそもいい加減な性格の人が多く、双方それが当たり前のことなので、ものすごくおっとりした国民性となってしまっているようです。
(誤解があるといけませんが、細かい島国なので、過去に小さな王朝が多くあり、その島だけで通用する言語がとてつもなく多く存在していたので、現代になってから国民教育で共通語として、隣国のマレーシアからマレー語を輸入して、簡単な言語を作ったという歴史がある国だからです)
日本人も電子ツールに頼ることで、曖昧な情報伝達が起こり、今後似たような国民性になっていくはずで、それを補完するAIの進歩に期待するしかありません。

では情報の間違った理解、認識が人対人でどう影響するか、冒頭での靴のトラブルを詳しくご紹介しましょう。

あまり馴染みが無いと思いますが、『クリーンルーム』ってご存じですか?
空気中の塵や埃が、極力抑制された部屋のことです。
半導体や医薬品メーカーのテレビCMなんかで、全身を忍者ハットリくんみたいなスーツで覆って作業されてる姿を、見たことがある方も多いんじゃないでしょうか。
僕は仕事でそのような現場にも出入りしているので、そのスーツを着ることもあります。
そんな場所では、とにかく“パーティクル”(極小の塵のことを言う専門用語)を発生させないために、それはそれは厳しいルールを守る必要があるんです。
靴も特別なシューズを履くのですが、あの日僕はこの靴の扱い方で、冒頭のようにいきなり怒鳴られたんですよ。
クリーンルームには“前室”と呼ばれる更衣室のような場所があって、そこで普段の服から無塵服という特殊な全身スーツに着替えるのですが、そのクリーンスーツは床に着かないようにハンガーで吊るされています。靴もクリーン度を保つために、専用の袋に入れて吊るしておいたのですが、スーツを着替える間、取り出したシューズを荷物置き用の台に置きました。すると、いきなり僕のクリーンシューズを床に叩き落されたという訳です。
僕は唖然としました。ビックリして言葉が出なかったんじゃなくって、この人の勘違いをどのように諭してあげればいいか、すぐに言葉が思いつかなかったんです。
その年配の男性は「お前は靴をテーブルに置くんか!」と、力んで怒っておられます。
(言い返そうかな? でも知らない人だし、今後のビジネスの障害になって欲しくないし)などと考えながら、
「すみません」と取り敢えず謝りました。
「違うやろ! 家で靴をテーブルに置くんか、聞いとるんじゃ!」
(もう、面倒くさいな)「いいえ、置きません!」と語尾を強調して言うと、
「そうやろ、気を付けい!」と言って、離れて行かれました。
(何あの人?)と、僕は呆然とその人を見送りました。
僕はそこのクリーンルームでは、ほんの出入り業者でしかありません。
一方、(あの方はここの社員さんかな?)と考えて、その場で対立することを避けたのですが、どうやらその方もただの出入り業者さんだったようです。
(モラルのないやつに注意してやった)つもりでしょうけど、正義感からそうされたとしても、受け入れがたい注意の仕方で、その印象から地位がある方には思えませんでした。
そもそも、僕はルール違反などしていません。クリーンシューズを台の上に置いたのは、そうすることが相応しいルールだからです。
その前室(更衣室)の床は、普通の靴下で歩きます。つまりクリーンルームの床よりパーティクルが多い(汚れている)のです。そこにクリーンシューズを置いてはいけません。だから日に何度もアルコールで拭き上げられた荷物置き用の台がある訳ですが、あの方は、それを食卓に例えて、まったく的外れな注意をされたのです。
クリーンシューズを床に置くのはまだもっと先にあるエリアで、そこから先はクリーンルームと同じ床の状態になり、逆に靴下で歩くことが許されなくなります。
このような施設で造っている製品の品質に配慮された設備の運用ルールを、よく理解されずに怒っておられたという訳で、あまりに説明が難しいので、僕は咄嗟に反論できなくなっていたという訳です。
そこでは出入り業者へのルール教育を、もっと徹底する必要がありますよね。