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静岡のとみちゃん
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悠々日和キャンピングカーの旅:⑪信州の旅

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 中国の唐の時代の漢詩人の白楽天の漢詩の一句による語で知られ、景物の美しさを表すとのことだ。雪月花に「風」を加えた「雪月風花(せつげつふうか)」という語も存在していて、それぞれの文字が「冬(雪)」、「秋(月)」、「夏(風)」、「春(花)」の四季に対応しているとのことだった。
 そして、三種の景物は雪月花の取り合わせがベースになっていて、たとえば、「日本三景」は、天橋立(雪)、松島(月)、宮島(花)。そして「日本三名園」は、兼六園(雪)、後楽園(月)、偕楽園(花)、とのことだ。このように、「雪月花」は、日本の芸術・美術の特質のひとつとしても捉えられているとのことだった。

 話を戻すと、駅構内には殆ど観光資料はなかったが、駅の隣の観光案内所で、これから向かう斑尾高原の資料を入手できた。ついでに、キャンピングカーが朝まで停まれそうな場所を訊いたところ、かなり詳細に、斑尾高原ホテルの前の駐車場は朝まで停めることができるがトイレがない等、幾つかのアドバイスを頂いた。サンクス。

 斑尾高原に向かう県道はかなり急な勾配だったが、先ほど満タンにしたので、心置きなくアクセルを踏むことができた。
 その途中に、黒姫駅の中の観光案内所で教えてもらった「野尻湖テラス」が確かあるはずだ。トンネルを抜けると見えたのはゴルフ場で、その先には、テニスコート、スキー場、その麓にはホテルのような建物が見えた。この「タングラムスキー場」の中にリフトが見えるので、その頂上に、「野尻湖テラス」があるのだろう。その手前の駐車場にはかなりの台数の車が停まっていた。
 周囲の山々には薄雲が掛かっており、間もなく夕方になるので、今からテラスに登っても、北信四岳の眺望は期待できないだろう。
 それにしても、妙高高原では人も車も少なかったのに、ここの駐車場のクルマの多さには驚いた。ここのテラスが人気の源泉なのだろう。

 夏のスキー場のビジネスの成功の秘訣は、何らかのアクティビティや風景を活かすことなのだろう。
 白馬のパラグライダーは前者の代表例で、後者はテラスから見渡せる素晴らしい眺望なのだろう。それに加えて、温泉があれば、更なる加点だ。
 北信五岳の東の端の斑尾高原の西斜面は幾分小さなスキー場だが、4つの山と野尻湖が見える絶好な場所に設けた「野尻湖テラス」はフルシーズン、ビジネスができている気がする。
 妙高高原もテラスを設けてはどうか。ゴンドラもあり、壮大な眺望が売りになるはずだ!

 長野県と新潟県の県境の万坂峠(まんざかとうげ、標高905m)を越した先が斑尾高原だ。
 峠から下ると、最初に目にしたのは「斑尾スキー場」の入口だった。その前を通過して、少し下ると、斑尾高原の中心地らしい場所になったが、妙高のようにホテルや旅館などは立ち並んでおらず、店舗やホテルなどがポツンポツンと建っている景観だった。駐車しているクルマの数は少なく、人影は見えない状況から、そう感じてしまったのかもしれない。

 まずは、今夜の車中泊の場所探しだ。
 先ほどの観光案内所で教えてもらった斑尾高原ホテルの前の広い駐車場に行ったものの、ホテルの客向けの場所のようで、そうではないキャンピングカーの車中泊は適当でないと判断した。
 「斑尾高原キャンピングパーク」があった。キャンピングカーのサイドオーニング(キャンピングカーの助手席側に取り付けられた出し入れができるタープで、伸ばした時に支える支柱がセットになっている)を張って、椅子やテーブルを並べて寛いでいる人たちがいた。
 「ジル」には、椅子やテーブルを積み込んではいたが、ひとり旅の今、そのような寛ぎ方より、ダイネットでゆっくりする方が良いと思いながらも、キャンプ場の受付場所に入ったが、予約が多く、飛び込みの人たちもいるとのことだったが、夜の賑わいを想像してしまい、別の場所を探すことにした。その時、キャンピングパークのスタッフから、車中泊できそうな場所はあまりないよと助言してくれたが、そこをあとにした。
 そして、少し下った先に、県道に面したパーキングがあり、トイレもあった。夜間の交通量は少ないと思われるため、そこで車中泊することに決めた。

 夕食は、先ほどの食品スーパーで買った八ヶ岳サーモンをムニエルにして、切れ目を入れた椎茸を炒めて、ネギも生姜もない冷ややっこにわさび塩を振って、それらをおかずにして、レンチンご飯にインスタント味噌汁だ。
 夕食後、コーヒーを飲みながらマップを見ていると、夕方の斑尾高原の中心地を散策したくなった。

 斑尾高原は東斜面にあるため、日没が早かった。駐車場の反対側にライトが灯っている長屋のテラスハウスがあり、そこには飲食店のような喫茶店のような店があったので、そこに行ってみた。
 私と同年輩の女性がひとり、手持ち無沙汰ふうだったが、私に気が付き、店に迎い入れてくれた。既に夕食を取ったことを告げたあと、斑尾高原についての近況などを色々と伺った。
 コロナ禍の中、今年の3月~7月は客が殆ど来ない最悪の状況だったことから話が始まり、周囲の店や建物は売りに出され、それらを外国人が購入したとのことだった。
 さらに、ここ数年のスキーシーズンは外国人ばかりで、斑尾高原の大きなホテルは中国人がオーナーになったとのことだった。
 この店は、知り合いが来てくれるので、何とか持ち堪えているとのことで、最盛期は、ご主人と5人のバイトで切り盛りしていたのとのことだが、今の雰囲気からは想像できなかった。
 以上の話を聞いてから、斑尾高原の様子を眺めると、シーズンオフなのか経営難なのかは分からないが、閉鎖されたホテルや店が点在していた。コロナ禍の夏のスキー場のある高原の寂しさを感じた。
 コロナが終息したあとは、以前の活況を取り戻すと思いたいが、「今の状況が続くのでは・・・」との彼女の言葉が耳に残った。

 その店を出てからは、少し先まで足を延ばした。
 営業している店が少ない中、イタリア料理のレストランはそれなりの客数だったが、客のいない店、ずっと閉店しているような店、誰も住んでいない別荘、その佇まいから、今夜の斑尾高原は淋しい雰囲気に包まれていた。

 「ジル」に戻ったとき、パーキングには「ジル」のみだった。
 ダイネットで、コーヒーをゆっくりと飲みながら、ふと思い浮かんだのは、自宅を出発してから、あちらこちらを巡って、長野県北部の北信地方まで来てしまったことだった。それは、わずか5日間のことなのか、もう5日間のことなのか、旅の長さと深さが交差しているようだった。

 そこで、これまで走ってきた長野県内の旅の足跡を、ネットで見付けた長野県のイメージ図(長野県移住3年目のイラストレーターで漫画家の方が描いた長野県地図のイラスト)の表現を引用して、ここまで走ったルートを整理してみた。