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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
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母の事情(続・おしゃべりさんのひとり言154)

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「お母さんの様子がおかしいさかい、救急車呼びますが、いいですか?」
僕は、「すぐ呼んでください」と言いました。まさかまさかこのタイミングで・・・
弟に連絡して、先に実家に向かわせました。弟の方が近いからです。
しかし、救急隊の方から僕に電話があり、母の体温は残っているものの、既に死後硬直が始まっている状態だと説明されました。
母は、ベッドから起き上がって、手摺に頬杖を突いた状態で亡くなっていました。
いつも疲れたら、その姿勢で座っていましたので、その日もきっと起きてすぐ(今日は、温泉楽しみやなぁ)と思ったまま息を引き取ったんだと思います。

とにかくこの日は慌ただしく時間が過ぎましたが、とやかく言ってる暇などありません。
警察が来て、自宅で死亡すると「司法解剖が必要だ」と言うし、主治医に連絡すると、「私が死亡診断書を書きに行きましょう」と言ってくださいました。そうすることで形式だけの司法解剖は免除されます。
そして死因をはっきり『がん』と記載してもらいました。そうでないと、がん保険が下りませんから、主治医には事前にそのようにお願いしていたのです。
そんなこともしながら、落ち着かない一日です。まだ母の通夜と葬式の段取りをしないといけませんもの。
父を送ったばかりで、もう慣れていると言えばおかしいですが、前回と同じ大手葬儀屋の担当者もそのことは理解されていて、こちらの要求をしっかり聞いてくれます。
もう相手の営業トークに乗るようなことは無く、お金のかかる事がら全てに質問して、無駄なものはとことん排除、必要に応じて金額を下げる工夫をしました。結果、父の時の3分の1ほどの金額で執り行う事が出来ました。しかも祭壇はどう見ても、母の方が豪華絢爛でした。
ポイントは重厚な式台などにお金をかけず、部屋の端から端まで切り花で埋め尽くして祭壇を作ってもらった方が、断然安かったんです。(まるでお花畑、絶対この方がおススメですよ)
火葬の後、初七日の法要は自宅で営み、経費を削減。昼の会食もやめて仕出し弁当を取り、参列者に持ち帰ってもらいました。
また、父の時に『家族葬』としたにもかかわらず、ご近所の皆さんも多く参列され、香典を押し付けるように置いて行かれてしまいました。この事には本当に困ったのですが、今回は、お断りするようなことはせず、すべて受け取らせていただきました。なぜなら、この実家の地域の取り決めで、(香典は断らないこと)になっていたそうです。今の時代になんとも地域の結束の強さを感じずにはいられません。

先日、母の四十九日の法要まで、無事終りました。するともう暫くは実家に訪れる用事はありません。
それを解っているので、従兄弟たちも(この家を訪問するのが最後になる)と思っていたようで、わざわざこの日の法要に集まってくれました。この家は父方のジイさんの家で、皆で夏休みや正月に、いっぱい遊んだ思い出がある家です。
その日、畑にはエンドウ豆がたくさん生っていました。玉葱やジャガイモも立派に育っていました。
春先に母が植えておいたものです。
自分が死ぬと解っていたのに、寒いうちから柿の木を剪定して、庭に防草シートを張り、畑に肥料を加えて、農協に苗を注文して、いつも通りに過ごしていたようです。
僕は、ジャガイモを収穫して皆に少し持って帰ってもらおうとすると、従妹たちも豆や玉ねぎの収穫を手伝ってくれました。それらは全部で50キロほどにもなる量でした。
そして最後に従兄弟たちと、家の前で集合写真を撮って別れました。

そこは120年前に建てられた古民家ですし、住む者がいなくなるとすぐに廃墟化するかもしれません。
もう誰もそこに住む予定はありませんが、たまには様子を見に行こうかと思います。


     つづく