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ススキノ レイ
ススキノ レイ
novelistID. 70663
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ウィタセクスアリスー言の葉の刃

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 そんなことを言われると、もう勃起させるのも困難な今の俺としては本当にあの頃の若さがあれば、と真剣に思ってしまう。確かに俺は積極的に彼女に愛情を示すことをしてこなかった。だからといって風俗嬢扱いしたつもりは決してない。確かに何かプレゼントをあげようとした時も現物を用意できないためこれで買ってくれ、と現金を渡していた。彼女は納得してくれたが表情は寂しげだった。8年間も縛ってたったこれだけしか会わなかったら苦情もくるだろう。効率が悪すぎて早々に見切りをつけられるところだし、他の誰かと付き合っても不思議はない。よく8年ももったものだと思う。彼女の忍耐力ゆえなのだろうが俺はそれを利用していたとも言える。彼女が気楽に楽しんでいたとは俺も思っていなかったが、彼女はあまり表に出さないので本当のところはよくわからなかった。ドライブ中などに表面上は気楽な話題を交わしてはいたが、彼女と真剣な話をすることがあまりにも少なかった。そもそも深刻な話題になるとややこしいことになるので俺はあえて避けていた。今日初めて知ったことが山のようにあり俺は今、複雑な思いだった。
 
 考え込む俺をみて彼女は
 「今日はありがとうございました。終わった後にこんな風に一緒に寝てくれたことなんてほとんどなかったですものね」
 「ああ、なんかいつも時間に追われていたからなあ」
 「あ、ていうか、そう、今日は射精してないからですよ。出すもの出せば男ってさっさと次の行動にうつるじゃないですか。そんな露骨にそっけなくしなくてもって思うくらいあっけなく切り替えるでしょ。そういうところで気遣いできるのは相当の手練れでしょうから遊びなれてない先生じゃ無理だったんだろうな、と今は思いますよ。さ、私たちもそろそろ帰りましょう」
 彼女は体をひねって俺の肩に両手を置き、正面から俺を見つめると、
 「私は本当に先生を愛していたんですよ。四六時中その男のことを考え続けるような恋愛はあの時だけです。以後そういう情熱は枯渇しました」
 と言って俺に口づけし、猫のようにするりとベッドを出てバスルームに向かった。
 
 車に乗り込むと彼女は
 「お茶もごはんも結構ですから、駅まで送ってもらえますか」
 「今度こそゆっくり飯でも、と思ったんだけど」
 「先生おなかすいてますか、すみません。でも今更そういう気分じゃないので」
 それ以後お互いに口は開かなかった。
 
 駅に着いて停車すると彼女は
 「今日はありがとうございました。どうかお元気で」
 と言った後、バッグの中を探り
 「やっぱり先生は私のことを理解しようとしていませんでしたね」
 と白い封筒を俺に渡した。
 「これは罰です」と微笑みを浮かべて一言告げ、車を降りてドアを閉めると一度も振り返らずに駅構内に消えていった。
 
 彼女から渡された封筒にはウエブサイトのアドレスらしきものが書かれたカードが一枚だけ入っていた。

 完