人間模様
その5
生きてゆく道のりには何度も何度も大波小波が押し寄せて、それでもなんとか漕ぎぬけて生き延びているのだが、ほとんどの苦は乗り越えて、這い上がって明るみに出て、たのしく過ごしているときもあるわけだ。
思い出して嫌だったこと、苦しくてもがいて過ごした数年があっても、トンネルを抜ける度に光を見ている。
人はトンネルがいくつもあったほうが知恵がつき、次第に生きてゆくのが楽になる。
がらんどうだった家が充実した空間へと変貌し、何もなかった目の前の景色は青く、またゴールドに光り輝いて見えるときがやってくる。
苦労したのはただの幻想だったのか、幸せだったのかどうかも記憶になく、悪いことのみ思い出して苦労をしたと思っている。