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人間模様

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その5


人は、同じ状況なのに気持ちが上がったり下がったりする。
些細なことに左右されるからだ。
昨日はあんなに幸せな気分になっていたのに、今日の気分は何だ!と思うほど落ち込む。嫌な気分のまま一夜過ぎての翌朝、あれ?と思うメールがきてほっとする。

平穏の中に波立つ漣ってとこだ。

身体でいえば、昨日は右腿が痛い、明日病院へ行こうかと思っていたら、今朝になって治っていて今度は右肩が刺すように傷みが走る。これはやはり普通じゃない、そう思って一夜寝ると、収まっている。

大病ではないのだ。それをああやこうやと心配しているだけのこと。
気分も同じではないか。

どーん!と病名の付く病気が見つかり即入院をと言われて手術したのよと或る人が言った。そういう人が身近に何人かいる。

病気ではなく、身辺に死ぬほど辛いことが突然起きて悲しみに打ちひしがれその傷みは永久に癒えないのだけど、食事だけはして命を保ち日常を営んでいる。

人はずっと幸せな状態を望んでいてもそうゆうことはあり得ない。それを知っていたなら、今はそんなときなのだと揺れながら悲しみと共に生きていれば、いつかは他から救いの手が伸びるだろう。


 完





作品名:人間模様 作家名:笹峰霧子