化け猫地蔵堂 3巻 3話 超人坊主
「ただ者じゃない」
「あんなすごい坊主、見たことがねえ」
杉の木の横に立って呪文を唱えていた坊主は、気が付いたらどこにもいなくなっていた。
起き上がった若い侍は、呆然と立ちすくしていた──。
「もしもし」
そばにいた男が話しかけようとすると、はっと気づき、口を開いた。
「急ぎの用件がございます。ごめん」
そう答え、立ち去ったという。
全海という坊さんがどんな人物だったのか、トラ猫にもミケにも分からなかった。
ときには人間の世界にも、超自然の力をもつ者が必要なのである。
その後、今戸から辻斬りは消えた。
大名たちは名刀の競い合いに飽きたのか。
●化け猫地蔵堂 3巻 3話 超人坊主 了
作品名:化け猫地蔵堂 3巻 3話 超人坊主 作家名:いつか京