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可能を不可能にする犯罪

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「そこが引き金になっているというのもあるだろうね。ただ、そこにやくざというか、闇の団体が絡んでいたんだよ。だから、監禁されていた時に、下っ端の連中が実行犯として暗躍していたわけで、まさか上の方も、やつらが、そんなことを口走っているなどと思いもしないだろうから、そこが、甘かったともいえるんだろうね。何と言っても、確実に殺したはずの相手が生きていたことで、事件の骨格が分かってしまい、さらに、殺すことができなくて、死んだということがハッキリしないことで、やつらも次の一手が打てなかった。その間に、記憶喪失が治ってきたわけだが、犯人グループとしては、電光石火で事件を表に出して、事件を一気に中途半端なところまで進めておいて、その中で、どうすることもできない状態まで警察が右往左往している間に、雲隠れすれば、うまく交換殺人というものを煙に巻くことができると思ったんだろうな」
 というのだった。
「なるほど、じゃあ、死ななかったことも、記憶喪失に陥ったということも、偶然の産物うだったということですか?」
 と三浦刑事が聴くと、
「そんなことはないさ。彼が記憶喪失になったのは、本当は落とされた時のショックではないのさ、これから自分が殺されるという恐怖と、今までの自分の罪の呵責などが入り混じって、記憶をうしなったのさ。それだけ、あの男は小心者だったということで、事件解決に一役買ったということさ」
「じゃあ、生き残って得をしたということですか?」
 と聞かれた門倉刑事は、
「この事件で得をする人間なんかいないさ。最初からマイナスに向かっての犯罪で、その残りが出てきただけさ。つまりは、本人たちが望む望まないに関係なく、まるでテストのようなひねった犯罪は、とても成功にはおぼつかないということさ。今回、記憶喪失になったということが、時間的には犯人たちの命取りになったわけだろう? 絶対に、すべての無限に近いパターンを網羅など、できるはずはないということさ。今回の事件には、きっともう一人の自分の存在が必要だったのかな?」
「どういうことですか?」
「やっぱり、どんなことをしても、実際に交換殺人など無理だということだよ。交換殺人が成立するには、きっともう一人の自分のような人間が暗躍する必要があるというか、いわゆる、ドッペルゲンガーだね。ただ結果的に、やつは生き残ったことで、よかったわけではない。後から思えば、あの時に死んでおけばよかったというような裁判が、やつには残っているんだからね」
 と門倉刑事はいった。
 後味の悪い結果の事件ではあったが、この悪徳社長は、門倉刑事のいうように、裁判に掛けられ、有罪判決を受け、ハッキリ言って。
「死ぬよりも苦しい人生」
 を歩んでいくことを、誰よりも本人が、今感じているということだったのだ……。

                 (  完  )
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