足つぼマッサージ(続・おしゃべりさんのひとり言147)
足つぼマッサージ
「イタタ!タタタタタタタ!!!タタタ!!・・・・」
もう苦痛に耐えられない。
「やめてやめてやめて!・・・」
やめて欲しいのに、やめてくれない。
「STOPSTOP、STOP!・・・]
通じてないはずないだろう、それでも無視される。
「等等,等等!一等,聽不懂嗎!?(待って、待って!ちょっと待て、解らんか!?)」
中国語で言っても、
「んぎゃーーーーーあああ・・・」
さらに力を込められた。
これにニ千円ほど払ったんですよ。まったく損した。
台湾出張中の休日の過ごし方に困っていて、ホテルのフロント嬢に相談したら、マッサージにでも行くことを勧められた。
それで現地の同僚に案内を頼んで行くことにしました。
台湾には怪しいマッサージ店が多いけど、この友人が連れて行ってくれたのは、真面目なマッサージ屋さんです。
そこは彼もよく利用するという、地元の足つぼマッサージ店でした。
両若男女が屯するかのように大勢、一人掛けソファーのオットマンに足を投げ出してお茶を飲み、足裏を揉んでもらいながら談笑しています。
僕は中国語も多少解るけど、見ず知らずの方たちと会話する勇気はまだなかった頃のことでした。
足つぼマッサージって、経験された方いますか? どうでした?
僕は痛くて耐えられませんでした。
そこでは白衣を着た男性が僕の相手をしてくれました。
隣に友人も座って、別のマッサージ師から施術を受けています。
所どころ通訳してもらいながら、体の悪いところを見付けては説明してもらいました。
足裏を強く指で押さえられると、一点集中で激痛を感じます。
僕が「痛い」と言うと、「ここは膀胱が悪い」「こっちは前立腺が悪い」「肝臓が悪い」などと、悪いとこだらけです。
つまり、どこを押されても全部痛いんですもの。フロア内爆笑の渦です。
周囲の人たちは、お茶を飲む余裕があるのに、僕はのけ反り返ったり、ソファから落ちそうになったり、とにかくその施術中、耐えるしかない状態だったんです。
その結果、「体すべて悪い」ってことになってしまいました。
ようやく終了して、額には汗、全身脱力。気を取り直してサイドテーブルに用意されたお茶を一口飲んだら、
「ブーーーッ!」
激苦い薬膳茶でした。
友人は、心配そうに苦笑いしています。
周囲の客は単に健康の為と信じて、やせ我慢してるように思いました。
まったく、この店の存在価値が解りません。
ところで、台北市の観光名所に『中正紀念堂』という所があるのですが、ご存じの方も多いと思います。台湾観光では必ず行くスポットと言ってもいいでしょう。
でもその敷地の端に『健康歩道』という、通称『足つぼロード』が存在しているのを知っている日本人は少ないんじゃないかな?
5センチくらいの黒い玉石がたくさん地面のモルタルに埋め込まれた、長さ30メートルくらいの凸凹小道があるんです。(扉絵の写真参照)
そこを裸足で歩くって訳です。健康のために(?)こんな文化があるんでしょうね。
結構多くの人が連なって歩かれていました。普通に歩く人もいれば、慎重に歩く人もいますが、走っている子供もいました。
僕も靴下を脱いで、何も知らずに挑戦しましたが、最初の一歩で気付きました。無理です。体重を載せることすらできません。
次の一歩を出すなんて、さらに無理です。痛すぎて体重移動なんかできないんです。
よくバラエティ番組で芸人さんが、こんな足つぼマットの上を歩かされる罰ゲームみたいなシーンを見たことがありますが、あれ大袈裟じゃないんですね。むしろよく頑張っているとさえ思えます。
(なんで台湾人は平気な顔して歩けるんだ?)って、不思議なくらいでした。
こんな経験があった僕は、日本の公園でそれに似た『足つぼエリア』を見付けた時に、妻と娘にやらせてみました。
すると、妻も娘も割りと平気な顔して、なんとか一周してくるんですよ。僕が軟弱なんですかね?
再び挑戦しても、やっぱり上に載るのが精いっぱい。痛みを我慢しても冷や汗が出るだけ、腸が捻じれるくらいに変な力が入ってしまいます。
これが平気な人と僕の違いって、一体何でしょうか?
また、妻を連れて台湾観光に行った際にバスツアーを申し込んだら、その中に足つぼマッサージが含まれてたんですよ。
僕はお金は払っていたけど、もう二度とゴメンなんで、その現場では施術を拒否しました。妻は所どころ痛みに耐えながらも楽しむ余裕があったようです。僕はそれを見ているだけで、吐き気がするほど恐ろしかったです。
本当に僕は体が悪いんでしょうか? 足つぼなんか押したら、逆に体が悪くなってしまいやしないでしょうか?
作品名:足つぼマッサージ(続・おしゃべりさんのひとり言147) 作家名:亨利(ヘンリー)