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まもなく時効

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53〇節子の入院している病院
   文子と一楓がいる。そこへ霧島と漣、吉永と朔太郎が入ってくる。節子
   はベッドに横たわっている。
文子「来た来たおじいちゃん」
   文子、節子に向けて言う。
文子「おばあちゃん、分かる?おじいちゃんよ。朔太郎さん」
   文子、朔太郎の方を見る。
文子「やっぱりおばあちゃん脳卒中やってて、しゃべれなくなって入院してガクンと落ちちゃって」
   朔太郎、節子の方へ行く。
朔太郎「節子、覚えているか?この写真。俺とお前で昔城ヶ島で撮った写真だ」
節子「……」
朔太郎「お前と二人でこの写真は絶対、誰にも見せないって約束した。外には出さないって」
節子「……」
朔太郎「でもタカミネパンの事件の鍵となっている大事な写真だそうだ。そして俺は……」
節子「……」
朔太郎「俺は……お前との約束を……」
節子「……」
   文子、漣、一楓、霧島、吉永が見守っている。
朔太郎「お前との約束を破ろうと思う」
節子「……」
朔太郎「許してくれ、節子。俺は俺は苦しんだ。本当に苦しんだ。年老いた俺はお前の若かりし頃の水着姿を見た。なんてあどけないんだ。なんて尊いんだ。この尊いものを汚してはならぬ。絶対守らなければならぬ。俺はそればかり考えていた」
   朔太郎、節子の手を握りしめる。文子ハンカチで涙を拭いている。
節子「……」
朔太郎「すまない。助けになってくれ。尊い犠牲者になってくれ。そして分かってくれ。俺は今でもお前を愛しているから」
   朔太郎、節子の手を握っている。節子、朔太郎を見て口をパクパクさせ
   るが言葉にならない。朔太郎、霧島の方を見る。手に持っていた写真を
   封筒に入れ、封筒を差し出す。
朔太郎「刑事さん。これがタカミネ事件の証拠になっているという写真です。これを警察に提出します。どうか犯人を逮捕して下さい」
   霧島封筒を受け取り、中の写真を取り出す。朔太郎の方を見る。
霧島「本当に……本当にありがとうございます。警察の間では多くの人に見られますが、民間のテレビなどには出したりしません。本当に、本当によくご決断して下さりました」
作品名:まもなく時効 作家名:松橋健一