死んだら損(続・おしゃべりさんのひとり言142)
普通は下見なんかしないようですが、式場のスタッフさんは立ち話でも、日頃思ってることを結構しゃべってくださいました。そこでは営業さんとは違う、いろんな話を聞くことが出来ました。またこの地域の葬儀のスタンダードな形を聞いて、本音も聞かせてもらえました。そして費用を抑える裏技までこっそり教えてもらいました。
その本音の話とは、この地域では、総額100万~150万くらいで契約されることが多いという事。
棺桶は一番安い桐製のものだと高い上掛けの布が必要になるので、逆に刺繍張りのお棺の方が、総額では安くなる事。
あまり豪華なプランにしなくても、式台の屋根の大きさ以外、見た目ではほとんど違いなど分からない事。
安いプランでも関係者から贈られて来る供花の数によっては、十分立派な式になることもあり、祭壇の左右に付いているオプションの花台を大きくする必要なんかない事。
家族葬と言っても、田舎の付き合いでいっぱい参列されてしまうこともあるので、式場は小さくし難いと言うのも事実だが、もし狭いのに参列者が多くなってしまっても、ロビーにまで随時椅子を並べてもらえる事。
付属サービスの写真撮影とか、DVD製作とかが必要かどうかは、遺族の希望により不要なことも多い事。
うちは親戚が多いので、家族葬でも40人くらいの食事が必要になります。ところが一般の参列者も来てしまうようなので、「それを見越した数で食事を予約しとかないといけない」という営業さんの話は事実だそうです。スタッフさんから、その対処法としてあるアドバイスを貰いました。
告別式の後、ついでに昼から初七日の法要までやってもらうつもりでしたが、そうすると予定外の参列者まで残られるので、食事を多めに予約しておく必要が出てしまいます。10人も増えれば10万円の出費です。そうならないように、告別式の後、火葬場に向かう際に、「駐車場の関係で自家用車では付いて来ないように」と、一言添えておいて、その移動には3万円でマイクロバスを予約しておけば、予定人数以外乗れずに帰宅してくれるそうです。
通夜の晩は会場に泊るつもりですが、「飲食物持ち込み禁止」になっていて、つまり「夜食や朝食を予約しろ」ってことなんです。でも、式場のスタッフさんとは、30分も話をすると打ち解けてしまって、「コンビニが近いから内緒にしておきますよ」だって。
他にも「香典は辞退したい」「式場には一般の方の参列はご遠慮いただきたい」等の希望を、地域の有線放送で案内してもらいましたが、これでも思うようにいかないものです。
次から次に自宅で眠る父の枕元に、入れ代わり立ち代わり誰かがやって来て、皆さん香典を置いて行かれます。いくら「受け取れない」と言っても、香典袋から現金だけを取り出して、「香典じゃない!」と言われる方までいました。
斎場でご参列いただいた一般の方々の中にも、決して香典を引っ込めてくれない方も多くいらっしゃいます。「普通はあそこまで強情な方は少ない」と葬儀場スタッフもおっしゃっていましたが、(遠い親戚や実家の近所付き合いでも、父とは強い結びつきがあったのかな)と思います。
結局香典だけで100万円近くにもなってしまいましたね。ゆえに予定外の香典返しも後日必要ってことですね。
葬儀屋の担当者の話では、香典返しはその金額の3割程度の品でいいそうですが、葬儀屋はなぜか手数料を取るそうで、最終的には3~4割ぐらいの現金しか手元に残りません。葬儀屋って本当に儲けますよね。
供花に関しては、親戚が多い分、皆が手分けして多くの花や回転灯籠、盛り篭を予約してくれました。
僕の仕事関係からも予想以上に多くの花が届きましたので、弟が務める銀行と妻の会社からも併せて、それだけでも十分な数が立ちました。
逆に多すぎたので、式台が小さく見えないように、結局、台の横のオプションの花台も追加予約してしまう羽目に。その方が式台を大きくするよりは安く付いたからです。
式代金とは別に、お寺のご住職様にお渡しするお金も必要です。
交通費としての御車代(通夜、告別式の2回分)、食事代の粗飯料(告別式の日は懐石料理を予約していますので、通夜の1日分)通夜のお布施、告別式の(なんと高い)お布施、諸七日法要のお布施。
それに加えて、父の『戒名』を考えていただくための費用も必要でした。これについては、我が家では先祖代々『院号』まで頂いてまして、合計九文字の立派な戒名となりますと、またお高いんですよね。すぐに位牌の予約も必要です。それの大きさが表面八寸サイズ(全高約40センチにもなる大きなもの)で、一般的ではなくカタログにも掲載されていません。実際に仏壇屋に相談した際には、このサイズは10年ぶりだそうで、職人さんの気合が高まり逆にサービスしていただけました。
また、葬儀までの手続きでお世話になったスタッフさんや、火葬場のスタッフさん、バスやハイヤーの運転手さんにも全員に、『心付け』として五千円ずつ包んでおきましたが、15人くらいだったと思います。これも無駄な田舎の風習ですね。
式以外の合計で、また100万円くらい必要でした。
近々、三七日忌と七七日忌(四十九日)の法要も控えていますし、もういくらかかるのやら。
うちの事情は一般的ではないと思いますけど、地域によっては、こんなにもお金がかるものではないようです。
妻の同僚の奥様の式は、公民館のような場所だったようで、式の装飾は極めて簡素だったようですし、ご近所の参列者がいらしても、香典は完全に辞退されていたらしく、質素な式になっていたようです。
義妹の義父の式では、亡くなった翌日が通夜という事もあり、何も準備できないような状況で、近所の葬儀場を使って執り行われていました。建物は新しかったですが小さく、式台は演劇セットのパネルのようなもので、供花の数も少なく、こちらも質素に仕上がっていました。これが最近の標準的な形だと思います。
実父の葬儀では、結局想定していた金額の1.5倍くらいに膨れ上がり、おかげで家族葬とは到底思えない立派な式となって、棺桶に入りきらない花は、花束にしてもらいましたが、誰も葬儀の花なんか縁起悪そうで貰ってくれませんでしたね。仏間に並べて立てておきましたけど、骨となって帰って来た父だけが喜んでいたことでしょう。
そして後日、告別式の写真集が送られて来ました。立派なアルバムに家族を遠目に撮影した生写真が10枚貼ってあるだけ。最後の1枚は葬儀会場の全景です。(←これは要らんやろ)それで確か料金は8万円ですよ。
また、告別式の際の火葬場への移動に、ご住職に利用していただいたハイヤーの請求書が郵送されて来ました。請求額、『7,800円』←(こんなもんかな)って思いましたが、もう感覚が麻痺してしまってるでしょうか?
娘がその請求書を見て、「プリウスなんかで移動時間5分くらいやったのに、そのタクシー、ぼったくりやん!」
それに対して僕は、「死んだら損するし、死ぬなよ」と言っておきました。
つづく
作品名:死んだら損(続・おしゃべりさんのひとり言142) 作家名:亨利(ヘンリー)