死んだら損(続・おしゃべりさんのひとり言142)
死んだら損
142話目、『人死に(ヒトシニ)』ということで、罰当たりなお金のひとり言です。
その前提として、今春に父が亡くなりまして、葬儀を執り行いました。
13年前には心臓の病で、弟の取引先の大病院に入院し、新しいバイパス手術の被験者となったのですが、もしものことを考えて、父とは手術室に向かう直前の病室で色々と話をしておきましたので、葬儀に対する本人の意向は解っています。
その時、念のために写真を一枚撮っておいたのですが、それを今回、遺影として使う事にしました。
まだ元気だった頃の最後の姿です。その手術の後、ほとんど寝たきりのようになってしまいました。
とは言え、結局それから13年も死なずに済んだんですが、ずっと無事だった訳ではありません。
その間、胆のう摘出手術、脳梗塞、パーキンソン病等を発症し、うまく歩けなくなって、転んで骨折したりと何度も緊急入院、リハビリ入院を繰り返しましたが、結局最後は病院で『老衰』により、ゆっくりと息を引き取ったのは幸せなことだったのかもしれません。
(病気で入院中に老衰?)って変に聞こえるかもしれませんが、老人ホームには入所せず、主治医の口利きで、ずっと病院で面倒を見てもらうことが出来たんです。この方が保険が利いて、ホームに入るより安くて介護も安心でした。
でも今日のテーマは死についてじゃない。湿っぽい話は止めて、葬儀費用について初めて感じたことを赤裸々に話します。
死者に対して失礼だとか、仏の道に反しているとかのご指摘を頂きそうですが、率直な意見を書かせてもらいますね。
「疑問が残る」って言うのが素直な感想で、不満が募った訳ではないですが、ものすごく丁寧な対応をしていただいても、すっきり納得できないモヤモヤと言うか、「正直言って、高く付きますね」この一言に尽きると思います。
実は、父が亡くなる3日前に、妻の同僚の奥様が亡くなられて、斎場が職場の近くだったので、妻は『家族葬』とされていたお通夜に、参列させてもらっていました。
「うちもそろそろかな?」とか言っていた矢先に、僕の実父が亡くなったんですが・・・。
さらに一週間後に妻の妹の義父が急逝されました。喪服を片付けたばかりでしたが、僕もとてもお世話になったお義父さんでしたので、お通夜には参列させてもらいました。
10日ほどの間に、3人の通夜・告別式を経験した妻の感想は、「お金のかけ方がはっきり判る」
全て記憶が新しいうちに次の式に参列しているので、細かな違いに色々と気付いたようです。
僕も義妹のお義父さんのお通夜では、経験したばかりのことなので、はっきりと違いが判りました。と言うより、(いくらくらいかかっているか)の想像まで付くんです。
最近の流行りは、小さく『家族葬』ですよね。でも実父は本家の当主でしたので、盛大に(語弊があるといけませんが、こじんまりの逆に)執り行う必要があったんです。
かと言って、「そんなにお金をかける余裕なんてない」が本音です。
父の死に関しては、13年間も覚悟をしてきたので、親戚とも事前に十分話し合えていましたし、どの規模で行うかも見当も付けていました。
だから、僕の見込みは(せいぜい200万円くらいかなあ? 高いなぁ)でした。
生前から準備していた訳ではないですが、十分シミュレーションは出来ていましたし、以前、妻の実父が亡くなった時のように、何も分からない素人が、葬儀屋の言いなりで契約するというのだけは絶対に避けたかったんです。
実際に父が息を引き取った朝、葬式の予定を立てようとすぐに動き出しましたが、お彼岸前だったので、お寺のご住職様の予定が詰まっており、また斎場も法要の予約だらけで、すぐに通夜を行えませんでした。
父の遺体は一旦実家に戻して、3日間もそこで家族と過ごしました。これは逆に良かったと思います。
時間がたっぷりあったおかげで、ひとつずつ考えながら準備が出来ました。
葬儀屋は全国チェーン(?)の大手にお願いして、セレモニーホールを予約しました。
ここを選んだ理由は、父母がずっと自分たちの葬儀用に、この葬儀会社で積み立てをしてくれていたからです。
そうだと出費が抑えられて助かりますよね。その積み立て額は76万円でした。
当然、会員価格の葬儀代総額から、この金額は引いてもらえます。
ちょ、ちょっと待ってください! それって何かお得ですか?
と言うより、どこに意味がある制度なんでしょうか?
会員になって積み立てしてても、してなくても、非会員さんと総額はほとんど同じじゃないですか。10万円違うかどうかです。
僕はてっきり、会員になって積み立てをしていれば、葬儀はもっと安く出せるんだと誤解していました。
単に葬儀代を先払いして予約していたようなもんで、入会時とは違い、実際に死んだ時、価格改定でどんな高額なプランを突き付けられても、もう逃げようがないんです。だからどんどん値上げが行われています。
もちろん規模に合わせて、安いプランもありました。でもその金額もそれほど安くないですよ。積み立てがあっても、全然足りませんもの。
花や卒塔婆なんかがプランに含まれてるのは解りますが、線香やロウソク、マッチ、それに半紙や筆ペンまで含まれていました。そんなの家にあるって。(なくてもコンビニで安く買える)
じゃ、他にもっと安いプランで宣伝している葬儀会社も増えてるじゃないですか。そこなら30万円から(実際には追加追加で100万円近くになるらしいですが)とか言ってるけど、そっちに乗り換えたくても、積立金返してくんないでしょ。(積立金がわずか2~30万くらいだったら、それを捨ててでも、もっと安いところで執り行う方がいいくらいです)
これが高額な葬儀代がまかり通っているカラクリだと思いました。
積み立てなどせず、リーズナブルで価値のある式をやってくれる業者を、都度選んだ方がいいと思います。
今さら悲しみの涙以外の泣き言など無意味ですが、出来るだけお金はかけないように、親戚の了解も得て、うちも『家族葬』という形を取りました。
つまり「家族と近しい親戚以外は来ないでください」と言うものです。
コロナ禍以降、主流となっているそうで、盛大な葬儀は時代遅れなようです。「家族だけで厳かに」という口実で、お金の面でもありがたいですよね。
でも葬儀屋はこれでは儲かりません。結局、普通葬と同じくらいの金額になるように、営業をかけて来られます。
弟はその金額に「高い、高い。もっとサービス出来ないか?」と言っていましたが、お得意さんであるはずがないので、特別割引が適用されるわけもありません。少しずつ装飾を減らすことで経費を抑える提案をされるだけです。最後は棺桶一つだけにまでならないと、安くなりそうにありません。
でも僕は落ち着いて聞くように心掛けました。妻も自分の父親の葬儀契約での反省点を心得ていますので、営業担当者の話に乗っては契約しません。式場を下見する、時間的余裕もありましたし。
作品名:死んだら損(続・おしゃべりさんのひとり言142) 作家名:亨利(ヘンリー)