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娘と蝶の都市伝説5

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「電話は、日本に掛けたものでした。名前かどうかははっきりしませんが、YUなんとかと言う言葉を会話の中でときどき聞きました」
「YUなんとか、日本か……」
運転席のコルビー警部補は、手をかけていたハンドルを軽く手の平で叩いた。

「ほかになにか、聞きなれないような言葉とか、なかったですか?」
アンナはちょっと考え、あります、とつぶやいた。
「『毛皮』『三万年』です。仕事ですからそのようなつぶやきはしょっちゅうですが、何回か聞いたような気がします。刑事さん、やはりエリックになにかあったんですね?」

アンナは再び意を決したように、手帳にメモを取るコルビー警部補に訊ねた。
「実は、なにがあったのか私にもよく分からないんです。だからいろいろあなたにお伺いしたのです。もしエリックさんから連絡がありましたら、どこにいるかを聞いて、私に連絡してください」
コルビー警部補は、懐から名刺をだしてアンナに渡した。

翌日、コルビー警部補は、コンピュータ犯罪の捜査官と一緒にUS歴史科学研究所におもむいた。
やはりエリックはUS歴史科学研究所を退職するとき、毛皮のデータや依頼主のデータを消していた。
エリックはゴードンから得た知恵をそっくり応用したのだ。
25&MEのデータが消え、毛皮と陰毛の一件は完全に失せてしまった。

 

昆明(こんめい)のCIAオフサーのエージェントの高虹(ガオホン)と名乗った王棐(ワンヒ)に、高虹から江宇航(コウユーハン)にメールが入った。
『自動車の墜落現場から、プリント用紙は見つからなかった。だが、明永村を探索した結果、事故で死んだガイドのボスのガツマリという男の家で、父親が拾ってきた数十枚ちかくの用紙の裏側を、子供たちが漢字の練習に使い、紙じゅういっぱいになったところで、焚き付け用として竈(かまど)で燃やした。竈の口に、小さな紙の残骸(ざんがい)を確認し、それが判明した。
また、三人の荷物を預かっていたガイドたちの遺族は、すべてをチベット側の市場に持っていき、売り払った。
以上』         





作品名:娘と蝶の都市伝説5 作家名:いつか京