娘と蝶の都市伝説2
ギラデの超粘菌から、この村の人々の生活についての話を聞き終え、BATARAの粘菌たちは納得した。
自分たちが永年住んでいたジャングルも昔はそうだったのだ。
長老のパルスを受け、超粘菌たちはアカシアの木の方向に移動を開始した。
やがて紋白蝶は、アカシアの幹からパプアニューギニアの空に飛び立った。
このギラデに、他人の富を狙う文明とやらが訪れてこないように、と超粘菌たちは祈った。互いに助け合い自立して生きている人たちを、いつまでもそっとしておいて欲しいと。
⦅そうだ、それがわれわれの考えだ⦆
ふいに長老の耳に言葉が飛び込んできた。
長老は姿勢を正した。それが微生物をふくめ、地球に住むあらゆる生き物を代表するメッセージであることは分かっていた。
⦅少し前、あなたたちに協力してもらった少女一件を覚えているか⦆
問われた長老は、脳裏に一人の少女の姿を浮かべた。
地球創成期の時間的表現であるから、一ヶ月二ヶ月という単位ではない。
「あの娘さんですね。おぼえています」
⦅また彼女に協力してもらう。だが彼女は永い眠りから覚めたばかりで、記憶もあいまいだ。久しぶりの人間の世界に戸惑っているが、すこしづつ思い出してもらうので、ときどきパルスで話しかけ、目覚めさせてやってくれ⦆
「了解しました。とにかく、このまま東にむかって飛びつづけます」
長老の身が引きしまった。
メッセージを聞いているうち、幾度となく地球滅亡の危機に関わった過去を思い出した。