減算法の都合
「地獄に行くひとがいるのだから、次の時代には、人間が一気に減っていて、他の生き物阿どんどん増えてくるのではないか?」
ということであった。
人間が減るということはないし、動物の種類ごとの数のバランスが崩れれば、生態系が変わってしまって、結果、すべての動物の死滅に繋がると考えると、
「この考えはおかしい」
と考えるようになったのだ。
だから、それであれば、
「誰かが死んだその瞬間に、誰かが生まれるというリズムになっていて、魂はその生まれた人に行くということになれば、バランスは必ず保てるということだ」
つまりは、
「人間は皆、また人間に生まれ変わるということで、それが偶然なのかどうかは分からないが、だから、生まれた時は皆平等だと言われているのかも知れない」
と思うと、それまで考えてきたおかしなことや矛盾が、少しずつ解消されているように思えてならなかったのだ。
それを考えると、
「死というものは、それほど、悲観的なものではない」
と言えるのではないか?
そんなことを考えると、
「人間は、自分が弄する策を、意外と人からされることに気づかない」
というが、
「この気づかないという感覚が、死に対して臆病にさせるのであり、それが、本来あるはずのない宗教的な世界を人間の意識の中に作りだし、それを、戒めとして人間に与えるのだとすれば、世の中というのは、結構うまく考えられているといえるのではないだろうか?」
そんなことを考えることで、人間の一生、それが永遠に続いてきた理由が、
「そのあたりにあった」
と言えるのではないだろうか?
「世の中は、消して、減算法だけで成り立っているものではないのかも知れない」
( 完 )
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