(前編) 黄金山基地の未確認生物たち:あんたには俺がいるだろ
「おいおい、これって大丈夫か?」
浩二に訊くと、何か嬉しそうに車内を指差すんだよ。
その方向に目をやると身長180センチくらいで、5秒くらいの間隔で光るグリーンアイズ、それに鼻先も顎も耳のてっぺんもピカリピカリと光ってる生物が5頭、楽しそうに談笑してやがるの。
これを見て、オッオッオッと俺が後退りすると、浩二は俺の二の腕をギュッと掴み、「昨日のAさんと同生物だよ、きっとこのカプセルで未確認生物の一大生息地へと連れてってくれるのかもな、白鳥神社に感謝感激雨嵐(あめあらし)、で、俺、おチビリしそうだぜ」と。
こんなとんでもなく興奮してる浩二に嵐(あらし)じゃなくって雨霰(あめあられ)だよと再度添削するのは諦めて、「チビリそうだったら、俺の腕じゃなく、己のチンコの先でもつまんどけ!」と言ってやったんだよ。
こんな突っ込みに浩二は「それもそうだな」とコクリと頷き、本当にズボンの上から指で摘まんでやがるの。それを見て俺は「あ~あ」と深くため息を吐いて、「浩二が言う未確認生物の一大生息地に一緒に行ってみるか」と覚悟を決めたんだよ。
ここまでの私の嘘か真か疑い深い話しをじっと聞いていた娑羅さん、いきなりパーの手の平を私の目の前に覆い被せ、「ねえ直樹、ちょっと待ってくれない」とストップを掛けてきました。
私は未確認生物のいきさつ話し、いよいよ調子が乗ってきたところでした。そこで「なんで?」と聞き返したのです。
すると森のプリンセスはムッとなされて、「直樹、あなたまだ出世も出来てないし、給料も安いでしょ、それがなんでか解ってるの、いつも下品で回りくどいのよ」と仰る。
「だって、最初から微細に話さないとわからないだろ」
私は一応こう反論しました。
すると姫は、「だって私が聞きたいと思ってる話しは『あなた達は神聖な黄金山の映像に映っていた、なぜあなた達はそこにいたのか?』です」と冷たい目で睨み付けてきました。
こう責められた私は、「だから、今説明してるじゃないか、その途中だよ」と不満を表明すると、姫様は鬼の形相となりながらも淡々と述べられたのです。
「だったら、なんで浩二のチンチンの話題が入ってくるの、――、ちょっと盛り過ぎよ! 一事が万事、こんなどうでもよい話しでみんな、特に私が喜ぶと思ってるの、そこが甘い、反省しなさい!!」
こんな娑羅姫の、まさに正論に私は返す言葉が見つからず、約30秒間項垂(うなだ)れ状態に。そしてやっと自分を取り戻し、「まことに申し訳ございませんでした、以後気を付けます」と素直に謝りました。
これに娑羅姫は「さっ、直樹、お話しを続けて頂戴」とニッコリ。その笑顔、まあっ可愛いってありゃしません。
こんな歪(いびつ)な形で生き返った私、未確認生物物語の次の章へと入っていきました。
作品名:(前編) 黄金山基地の未確認生物たち:あんたには俺がいるだろ 作家名:鮎風 遊