(中編) 黄金山基地の未確認生物たち:やっと先が見えてきた
さあれどもですよ、娑羅姫は違ったのですよね。
半オクターブ声のトーンを上げられまして、かつ力強く仰っられたのです。
「その地球再生プロジェクト、お受け致そうぞ!」
「えっ、えっ、えっ、たとえ我らの女王さまでもそんなん簡単に決めんなよ、……、ブーー」
浩二も私も親指を下向けての最大ブーイングを。
しかし、娑羅姫はぜんぜん動じませんでした。その上に私たちに対し真正面で向き合わられ、仰ったのです。
「いいわよ、地球再生プロジェクトに参加してもらわなくっても、さあ今からでも遅くないわ、安月給にオンボロアパート、出世の見込みゼロ、そんな地球生活に戻ってもらっていいわよ。だけどもう基地には入れないし、これこそが今生のお別れってことね」
私は慌てました。だってこの基地のお城に住んで、娑羅女王を夫として支えていくことを覚悟したのですよ。
こんなビッグチャンスを手にするには当然大きな覚悟が必要です。
また浩二はマーマー姉さんとも知り合い、今までの未確認生物を追っ掛けてきて、黄金山こそ究極の場。終(つい)の棲家(すみか)だったようです。
浩二も私も直立不動、そして会場全体に響き渡る声で決意を述べました。
「地球再生プロジェクト、その推進に精進致します」と。
だけどどうしたらこの美しい星、地球をどのように救えば良いのか、まったく白紙です。勢いよくこぶしを突き上げてはみましたが……。
そんな時に会長さんがそっと寄って来られて、「昔友達が言ってたんだよな」と。それから私たちの手をギュッと握りしめて、耳元で囁かれました。
「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」と。
ああ、これって受験の時にあったな、確か上杉鷹山だったかな、とボンヤリしていたら、娑羅姫が何を思ったのか私の胸に突然飛び込んで来ましてね。
そして柔らかな声で囁かれたのです。
「直樹、決心してくれてありがとう、もう私を独りぼっちにしないでね」と。
これぞ男冥利、私は力一杯娑羅さんを抱きしめて、事もあろうか、「お前百までわしゃ九十九まで、共に白髪(しらが)の生えるまで」と吐いてしまったのです。
すると娑羅さんはムッとなり、「ダッサー!」とお怒りの様子。
私はこんな門出でこれはちょっと拙かったかなと暫し熟考。結果、私は実にすがすがしく明言したのです。
「Together, always as ever !」
作品名:(中編) 黄金山基地の未確認生物たち:やっと先が見えてきた 作家名:鮎風 遊