時代回顧
ということになると、こんなネットの狭い範囲でも、争いや面相臭いことが起こっている。
しかも、世の中の理不尽と思われることや、犯罪などがまったくなくならない。
社会主義がいいとは言わないが、少なくとも今の資本主義がいいわけではない。サムはそんなことを考えながら、自分なりに、スペース内で起こったことを、メインの趣味でまとめてきたのだ。
その趣味というのは、
「小説執筆」
で、その内容が、10年後にネット世界でベストセラーになった。実際に掲載してから、10年後だった。
実は、一度この小説を書き上げた時、この内容に合致するような時代が過ぎ去った紙一重だったのだ。
しかし、それがまわりまわって、十年後に、時代が回ってきていて、
「時代回顧」
を繰り返していたのだ。
話は、架空と現実の層を何重にも目降らせた。まるで、バームクーヘンのような内容で、しかも、それがマトリョーシカを思わせることで、そこに、時代回顧が巡ってくる話であり、10年後のヒットというのは、予感されていたことかも知れない。
しかし、その時すでに、作者であるサムはこの世にいなかった。
といっても本当に死んでしまったのか、ネットの世界のサムは死んだが、
「中の人」
である本人が、表に出てきたくないという思いからか、
「作者、サムは死亡」
ということで、ヒットしたのだ。
サムの中の人はそれでよかった。プロ作家になろうなどと思ってもいなかったからだ。
印税だけをしっかりもらい、自分の中の人生を、ずっと暮らしてきた、SNSの中で、生きていくことになるのだった……。
( 完 )
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