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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
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鳥の捕り方取り扱い方(続・おしゃべりさんのひとり言126)

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鳥の捕り方取り扱い方



我が家では、よく鳥の話をする。
妻はアレルギーがあるようで、家で飼うことは出来ないのだけど。
娘はフクロウが好きで、「飼いたい!」って言うから、「山で捕まえて来い」って冗談言ってたら、「野鳥は飼えないよ」だと。

売ってる鳥は別として、野鳥って捕まえて飼っちゃダメなんですってね。
天然記念物とかだったらそれも解るけど、スズメでもダメだって言うんです。
じゃハトは? ハト飼ってる人っているじゃない。伝書バト。
伝書バトになるハトは、カワラバトという種類で、俗にドバトとも言われて日本中にいますけど、実はこれ全部、伝書バトが野生化した外来種なんですって。
それでも勝手に捕まえて、飼う事は出来ないそうです。
つまり、今はいかなる種類の野鳥も、特別な許可なく飼育や駆除はもちろん、ケガを負ってたとしても、(原則)保護さえしてはいけません。

僕は子供の頃、小鳥が大好きで、手乗りのセキセイインコに言葉を教えて遊んでたのを思い出しました。
大きな鳥カゴで、何羽も飼って色取りどりの鳥たち。
でも父さんはメジロやウグイスを飼っていました。当時はそんな野鳥の飼育がブームだったようです。
それらは父さんの実家の山で捕まえて来ていたんです。果たして、そんなことして良かったんだろうか?
竹ひごを組んだような風流な鳥カゴに入れていましたけど、近所にもそういう大人が結構いたけどな。
調べてみると、1980年頃にウグイスの飼育が禁止になって、メジロは2007年までは飼うことが出来たようです。
じゃ、よかった。違法飼育はしていなかったことになります。
とは言え、野鳥の飼育は難しく、その責任というのは、とてもとても、とても大きいのです。

僕は昔から「鳥モチで捕獲するのは法律でダメ」って聞いていました。
鳥モチっていうのは、木の枝にネバネバのペーストを塗っておいて、エサに誘われて来た鳥の足が粘り着く罠です。Gホイホイと同じ原理。
でもそれをやってる大人は結構いて、近所の神社の木の枝に着けてあるのを見付けると、土をかけて無効化していました。
僕らがやっていた捕獲方法は、野外にネットを張る方法です。
それを『かすみ網』と言って、合法だったのかはよく知らずに使っていましたが、これも調べてみると、1991年以降、使用は基より所持までもが禁止になっていました。
それは髪の毛みたいな黒くて細い糸で編んだ一畳ほどの大きさのネットを、木と木の間に張っておくだけです。
10メートルくらい離れた所で待ってると、そこを通った鳥がクモの巣みたいに引っ掛かるって簡単な罠です。
すぐに外してやるとネットの糸は簡単にほどけるけど、しばらく放置していて見に行くと、鳥が暴れて絡まり外せなくなってしまい、ネットを切る羽目になるのです。
だからずっと横にいて、かかるのを見守っていました。それが楽しかったんですが。
そうして何羽も捕獲して、スズメ以外全部持って帰りましたが。母さんが全部逃がしてしまいます。
その中で2羽だけ飼育していました。それがメジロとウグイスです。

小学校4年の時の事です。飼ってたウグイスのケッキョ君が死にました。
鳴き声がうまく「ホ~ホケキョ」とは鳴けず、「ケッキョ、ケッキョ」言ってた子です。
父さんが大切にしてたのに、突然死でした。
市販の粉エサを水に溶いたり、小鳥用にプランターで栽培してた菊菜の他、空き地に生えてたハコベラ(春の七草の一種)を摘んで帰ったり、野菜の葉に付く幼虫を与えたりしていました。果物はバナナを好んで食べていたのに。
エサが悪かったのか、突然死んだ理由はよく分りません。
野鳥の飼い方なんて、インターネットの無い時代に調べようがなく、なんとなく(これ食べるかな?)くらいの知識でしかありませんでした。
父さんは「野生から突然、カゴに入れられたからストレスや」って言っていましたが、確かにそうなのかも。
また追加して捕獲しようと思いましたが、竹の鳥カゴが小さかったので、「一羽以上入れん方がいいかも」って父さんが言ってましたから、その後は残ったメジロだけを飼うことにしたんです。
そのメジロのミドリちゃんの方が、僕のお気に入り。
名前の由来は、見たまんま緑の鳥だからです。正にウグイス色って感じの渋い緑でした。
その色のイメージから、結構このメジロのことを、ウグイスと勘違いしてる人が多いようですが、僕は子供の時にそのニ種類を間近に見ていたので間違いません。
本物のウグイスはウグイス色じゃなく、ほぼ黄土色です。

そのメジロのミドリも、ある日突然元気がなくなりました。
とまり木にとまらず、床でうずくまるようにして、震えていました。
冬ではなかったので、寒いわけではなさそうです。
僕はどうすることも出来ません。昼間は遊びに行きたかったので、気がかりながらも見て見ぬふりをしました。
晩になると母さんが鳥カゴを玄関の中に入れたんですが、ミドリの異変に気付きました。
僕を呼んで「死にかけてる」って。
やはりミドリは、うずくまったまま動きませんでした。エサも食べていないようです。
その日はタオルをかけて寝ました。
次の日の朝もミドリは元気がありません。じっとしたまま動いていないようです。
僕はミドリをカゴから出して手に持ち、エサを口元に持って行きました。
「がんばれ、ミドリ。がんばれ」
それでも食べてくれません。
その後は学校に行きましたが、一日中ずっとミドリのことが気になります。

放課後、一直線に家に帰って、まずミドリの様子を確認しました。
かなり衰弱していますが、まだ目を瞑ったまま息をしていました。
僕は菊菜を磨りつぶして、ペースト状のエサを作りました。こうするとよく食べてくれていたからです。
またミドリをカゴから出して、エサを口に付けてみました。
(少しは元気になってくれないかな?)
・・・それでも食べてくれません。
当時、獣医に見せるという感覚はなく、つまりはどうしたらいいのか分からない状態です。
それから1時間くらい。ミドリをやさしく握って、そのエサを口元に持って行っては様子を見ました。
すると何度か首を伸ばして、クチバシを菊菜ペーストに付けましたが、食べることはしませんでした。
(でも、いけそうだ)
なぜ食べないのかは分かりません。エサが合わないのか、食べる力がもうないのか?
ずっと玄関に座ったまま、そんなことをしていたので、母さんも見に来ました。
「水飲ませてみ」と母さんが言いました。
僕は、カゴに入れていた小さなお猪口の水を、ミドリのクチバシに付けてみました。
すぐには反応しませんでしたが、何度かトライしていると、ようやくミドリは首を持ちげて、頭を震わせながら、力を振り絞って一口、ほんの一口、水を飲み込んだように見えました。
(やった!)
そう思った瞬間、ミドリの力が抜けて、その首を垂らしてしまいました。
ミドリは握った手の中で、そのまま死んでいたのです。

「うわぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!!」

その出来事に、僕は大声で泣き叫びました。


     つづく