認知症に遠い心の持ち方
その5
家も田圃も無くなった生家ではあったものの、懐かしくて度々出かけて眺めたものだ。そこに行っても元居た近隣は誰もおらず、何かの連絡は千代ちゃんに頼むしかなかった。
引っ越しをして喜んで住んでいた夫と母は、その8年後には夫は病気で倒れ14年後に母は入院先で96歳の命を終えた。
連れて来た猫はしばらくは居たのだが居なくなっていた。猫は死に目の姿は見せないのでどこか死に場所を見つけて死んだのだろう。認知症の叔母は徘徊を続け介護は大変だったが、一年後に静かに自室で息を引き取った。
作品名:認知症に遠い心の持ち方 作家名:笹峰霧子