認知症に遠い心の持ち方
その3
千代ちゃん夫婦と話すようになったのは、わがやに夫が婿に来て自治会などで千代ちゃんの旦那とも口をきくようになったからだ。夫は千代ちゃんの旦那のことを賢い人だと好感を持っていたようだった。
数年経ち、千代ちゃんの子供も私の子供達も遊学中で家を離れ、お互いが親だけの期間が長く続いた。千代ちゃんの家は川の上に建っていてとてもお洒落な家だったが、川とはかなり段差があり家の裏を通る通路がとても狭くて柵もなかった。
千代ちゃんの旦那が川へ落ちて入院したと聞いて病院へ見舞いに行ったときはもう物を言える状態ではなかった。亡くなって葬式に行った記憶はある。
そのころから千代ちゃんとの距離が少しずつ近くなったような気がする。
作品名:認知症に遠い心の持ち方 作家名:笹峰霧子