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ショートショート まとめ

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その音は夜になると毎日のように起こり、朝になって土を平らにするのが神主の日課になった。
「やれやれ、良い年になるのかと思えば重労働の毎日だ」とぼやきながら、ふと気付いた。イチョウの大木が数メートルも移動しているのである。毎日気をつけて土の盛り上がりを観察すると、境内を行ったり来たりしているみたいだ。丸く輪を描いていたり、Uターンしたり、直線に行き戻りしたりしている。

「まさか木が歩くなんて……」神主は呆然と大木を見上げた。

神主はその夜、寝ないでそうっと戸の隙間から覗いてみたら、イチョウの根元がムカデの足のスローモーションを見ているように動いて、ズリズリと移動している。さすがの何日も繰り返したので土も軟らかくなり、最初の時のように大きな音はたてていない。
「さて、どうしたものか」と神主は戸惑うばかりだった。

神主は古くから神社に伝わる記録を片っ端から調べたが、どこにもそのようなことは載っていなかった。

その夜、徘徊痴呆老人がイチョウの樹の側で立ち止り呼びかけた

「い〜っちゃん、あ〜そ〜びましょ」 

イチョウの樹が揺れた。

(了)