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ショートショート まとめ

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知らないお兄さん



わたしは変わり映えのしない毎日とは違う何かワクワクするような予感にとらわれて、その人たちの方に近づいた。

知らないおじさんと話したり、ついていったりしてはダメだよと教えられた気もするが、大丈夫。だってわたしと同じくらいの人たちも何人もいるんだから。

何か説明しているのは、知らないおじさんではなく知らないお兄さんだけど、すごくやさしそうだ。あっ、わたしを見て微笑んだわ。こっちへ来る。

お兄さんはやさしく、わたしの手をとって部屋に案内してくれる。足許を気にする心遣いは家族の誰よりも優しいわ。絶対大丈夫よね。

部屋の中ではすでに十人以上坐っていた。そしてその人たちも期待に満ちた眼でお兄さんを見ている。
何人かいるお兄さんは、皆ニコニコと話をしたり、何か用意をしている。あ、あそこに袋に入ったお土産のような物も積んであるわ。
楽しみー。私はワクワクしてきた。

お兄さんたちの一番えらいと思える人があいさつを始めた。
「おぼっちゃん、おじょうさんたち、こんにちわ」

くすぐったそうに、皆小さく笑った。わたしもおじょうさんなんて、言われるの久し振り。
「この袋には、すてきなものが入っています。欲しいですかー」お兄さんが叫ぶ。
「ほしいー」と言う声が部屋を埋める。
「はーい、欲しい人は手を挙げてー」
一斉に手を挙げる人たち。わたしも手を挙げた。


わたしはお土産の入った袋と、説明されてもよくわからなかった「長生きできる薬」を持って帰宅した。
嫁が私の手元を見て、「お義母さん。また効きもしない健康食品を買わされたの」と言った。