ショートショート まとめ
不取扱説明書
俺は深夜のTVショッピングで、かなり興味深いものを見つけた。それはヘルメットの大きくしたようなものを頭に被せて30分。それで好みのヘアスタイルになるというものだ。切った髪はどうなるのかと見ていたら、その本体にホースが付いていて、それを掃除機の小さな様なもので吸い取るらしい。床屋で、首にエプロン状のものを巻き付けられるのが苦痛な俺は行く度に疲れてしまうのだが、これは首に巻かなくて良いので良いかなと思った。ヘアスタイルは3種類しか選べないが、後で整髪料とドライヤーで調整できるだろうと思い、もうかなり買う気になった。
「今なら、この床上手に……」
何だって床上手?何か違う意味があったような気がするが、まあ名前なんて何でもいいが。俺はさらに見続けた。
「……鋏とクシがついて……」
オイオイ、自動で散髪できるのになぜ、鋏とクシがつくんだよと俺は思った。
「……何と2万9千990円!」
何でそんなややこしい値段にするんだ3万円でいいじゃないか。俺はその感覚が分からない。
「わあ、すごい、僕2台欲しいな」
そういえば昔TVで活躍していたタレントが大げさに誉めて盛り上げようとしている。
2台買ってどうすんだ、頭は1つだろうが、そうつぶやきながらも、俺は3万円の出所を考える。もう30をとうに過ぎているのに結婚もしていない。幸い給料日の後だ。後は何とかなるだろうと注文したのだった。
作品名:ショートショート まとめ 作家名:伊達梁川