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ショートショート まとめ

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存亡の危機



私は親が遺してくれた広い屋敷の中で一人食事をしている。バブルの時代に友人が起業した時に保証人になり、不況のあおりでそいつは蒸発してしまった。私は家を担保に借金して返済したが、あげく自分まで失業したと同時に妻は子どもを連れて出ていってしまった。それなりの理由はあるのだろうが、今は何を言っても空しい。この家の広い空間も余計に惨めにさせる。しかしこの家を手放す日も近い。

蔵にあった金目のものは殆ど売り払ってしまった。その中でたった一つ押入に移した物のことを私は思い出した。もしかしたらあれは結構な値段で売れるかも知れない。何代続いたか分からないが、相当昔のものである。

風呂敷を解いて木の箱の蓋に書いてある達筆な筆文字を読んだ。内容は「代々伝えしもの、決して人目にふれさせぬこと」という内容だった。さらに○○家存亡の危機時のみ開けることを許すとある。
今がその時だろうなと思いながら私は不安と期待ない交ぜのまま蓋を開けた。
開けると中からパッと白い煙は出てこなかった。中には和紙に書かれた文字があった。
えっ、これだけ? 私は肩すかしをくって、前のめりになり箱におでこをぶつけてしまった。

「ご先祖さまぁ、これだけぇ?」