ショートショート まとめ
また、道路を隔てて向こう側にはここの大家の昔からのライバル富田という者がいて、同じようにマンションをたて、ここもまた隣の大邸宅に住んでいる。
私は仕事がら、出勤することがなく家にいる時間が長く、外の話し声がよく聞こえてくるのだが、この大家たちは声が大きい。仕事部屋が大家のリビングに一番近いせいか話は筒抜けだ。内容はギャンブルの話が多かった。そして競輪、競馬など普通のギャンブルは飽きてしまって、二人で大きな賭けをしているらしい。
何と期限はあと一ヶ月とか言っているが借金ではあるまい。そして不動産屋にはよく顔を出して何やら話をしている。さらに儲けようとしているのだろう。こちらがコツコツと働いてやっと生活しているのに不公平なもんだ。
しばらくして佐藤さんの越していった後に二瓶さんが入居した。二瓶さんは確か福島県に多かったようだなと仕事がらそう思った。
「不動産屋さんが熱心に進めてくれるし、礼金はいらないというので決めたのよ」と二瓶さんの奥様とうちの女房が話しをしているのを聞きながら、そういえば、自分達も規定の家賃から5千円安くするという条件で入ったことを思い出した。
さらにこの並びで一つだけ空いている部屋に引っ越してきた人がいる。集合ポストにはまだ名前が入っていない。
作品名:ショートショート まとめ 作家名:伊達梁川