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幼なじみ



幼なじみの彼女はいつも僕の側にいた。それはもう僕にとって当たり前のような日常だった。
何年か経っていつしか女性として意識するようになった。もっと近づきたい。彼女を抱きしめたい。その思いはどんどん募る一方だった。しかし、手を伸ばせば触れることも出来るように見えるのに、彼女は微妙な位置から動かない。彼女は僕のことをどう思っているのだろう。考えるほど僕の身体は動かない。
 
さらに何年も経った。僕たちも大きくなった。大地に根を下ろすと形容される立派な足も彼女の元に動くことは出来ない。
彼女の足もまた動かないのだろうか。彼女は相変わらずいい匂いを出して僕を悩ませる。ああ、この足が動いたら。僕は必死に足を動かそうとした。この努力を続けることで僕は明日への希望とした。

さらにさらに何年も経った。さらに大きくなった僕たちは、ちょっとだけ触れ合う仲になった。それは僕の努力が報われたせいなのか、時の経過のためなのかわからない。

大きな台風が来た時だった。僕は彼女と狂おしいほど触れ合った。しっかりと抱きしめたとは言えないが、僕たちは情熱のありったけを注ぎあった。

気の遠くなるような時間が経過した。僕と彼女は、運命の神様がいたずらをしたように、微妙に近くて遠い位置にいる。

イチョウ材となった僕と彼女は碁会所で隣り合って碁盤として、また長い長い年月を幼なじみとして過ごそうとしている。